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【雑記】耳を欹てて音楽を味わうこと
自分が面と向かって言われたわけではないものの、「クラシックのコンサートに行かない理由」を書いている人を見かけまして、その内容に反論したいと思うところがあったので今回の記事を書きます。 榎本はクラシック側の人間ですし、今回取り上げた意見に対峙する際に「自分の価値観もやはりクラシック側ではあるな」と再認識したところでもあります。クラシック音楽を代表するつもりも立場もありませんが、それはそれとして個人的に助走をつけて反論しますのでお覚悟を。 まず、冒頭に述べた「クラシックのコンサートに行かない理由」として挙がっていた内容を要約すると以下のようなものでした。 ① 電気的な音量の増幅が無い(PAを使わない)ので音が聴こえにくい。 ② 演奏中に雑談をしたり雑音を立てると注意される。観賞マナーが厳しい。 ③ 飲食しながら観賞できる機会が少ない。 ④ これらの要求をしてもクラシックの音楽家たちが従わない。 …僕の記事の読者の中には、これらの意見に対して既に憤慨した方もいらっしゃるとは思いますが、怒りに任せてこれらの意見を投げ捨てるよりも懇切丁寧に批判してや

Satoshi Enomoto
11月7日読了時間: 8分


【音楽理論】楽語の意味を元になった言語としての意味に求めてよいのだろうか
楽譜を読む時、様々な楽語が目に入ってくることでしょう。それらの楽語の意味を知るために、我々はまず楽語辞典を引くことになります。検索エンジンで調べる方もいらっしゃるでしょう。出てくる情報の多少の差はあれど、概ね共通した「楽語の意味」には辿り着けることと思います。 ここで好奇心の強い方は、その楽語の元となっている言語上の意味についても調べようとするかもしれません。楽譜上の言葉の多くはイタリア語ですが、ドイツ語やフランス語などもあるでしょう。楽語についての辞書ではなく、言語についての辞書も引くことになるわけです。 言語としての元の意味を知ることによって「だから楽語としてはこのような意味になるのか」と納得できる場面も多々あると想像されます。それ自体は学びとして結構なことです。 ところが、問題提起はここからです。果たして 楽語の意味は言語の意味と本当に同じでしょうか? 「言語の意味から楽語の意味が導き出されているのだから、意味が異なるわけがないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、楽譜における楽語の用いられ方は、会話や文章における言語の用いら

Satoshi Enomoto
10月31日読了時間: 7分


【名曲紹介】《4分33秒》だけじゃない、勝手にケージ入門楽曲5選+α
ジョン・ケージ(John Cage, 1912-1992)の名前は恐らく《4分33秒》と共に知られているでしょう。「無音の音楽」として既にご存じの方も多かろうと思われますから、もう驚くほどのものではないでしょう。むしろ、 面白可笑しく「演奏してみました(何もしない)」などというポーズを取る人が定期的に現れるのを見るのにはそろそろ飽きてきました 。 まあそれだけならどうということは無いのですが、この《4分33秒》だけが独り歩きして世間一般におけるケージのイメージが「無音」になるということは、ケージの音楽における恣意的な部分を好んでいる僕にとってはあまり快いものではありません。あろうことか、方々のカフェやバーなどで僕がケージの小品を弾くと決まって、しかも普段ピアノを弾いている人からさえ「これもケージの作品なんだ~!」などと驚かれるものです。 そこで特にケージの専門家などではない榎本が愛聴している作品を独断と偏見において選び、頼まれてもいないのに薦める記事をここに書く次第であります。僕はケージを研究しているわけではないので迂闊に専門的なことには言及

Satoshi Enomoto
10月22日読了時間: 6分


【雑記】フライング拍手・フライングブラヴォーを撲滅せよ
記事タイトルの通り、これらに関して僕はフライング拍手・フライングブラヴォー完全否定派です。自分の演奏に関してはそもそも聴きに来る方々が良心的である場合が多いので(そりゃあこんな奇妙なプログラムをわざわざ聴きに来てくれるのだから)、フライングでこれらが飛んだことは今までにありませんが、しかし自分が聴く側でいる時に同じ客席から飛び出したこれらの被害に遭ったことは何度もあります。 自分の経験した中で特に許せなかった例を挙げるとすれば、ミューザ川崎でシェーンベルク《グレの歌》を聴いた時でしょうか。大編成の合唱とオケから放たれる大音響の残響がまだ全然残っている内にフライング拍手もフライングブラヴォーも起きたのですから、どんなに不快であったかは想像していただければと思います。ジョナサン・ノットはまだ手を下ろしていませんでした。フライングで拍手やブラヴォーを飛ばす人々はいかにもコンサート馴れしているような素振りをしつつも、指揮の見方は知らないようです。 演奏者側からすると、どんなに早く拍手やブラヴォーが起こったとしても、それが音楽を全部味わい切った直後のも

Satoshi Enomoto
10月17日読了時間: 6分


【YouTubeコラボ】のらクラシック部『ウェーベルンの代表作《ピアノのための変奏曲》Op.27を徹底解説!』【期間限定公開】
のらクラシック部 『ウェーベルンの代表作《ピアノのための変奏曲》Op.27を徹底解説!』 前編 後編 修正・補足編 プロ・アマチュア音楽家の友人たちが立ち上げたクラシック音楽系YouTuberグループ『のらクラシック部』にお呼びいただきまして、ヴェーベルンの《ピアノのための変奏曲》Op.27について解説トーク(榎本個人の意見も含む)をした動画が期間限定公開となりました! のらクラシック部のメンバーは昨年から榎本が不定期開催で行っている作品解説&実演を試みる試演会『私的演奏協会』、やはり昨年のリサイタル『十二音の色彩 〜シェーンベルク生誕150年によせて〜』、そして今年の『象徴と時間 近代フランス音楽の開拓者たち』にもご来場くださり、普段から大変お世話になっているところです。 今年の5月時点でこの解説動画のお話をいただき、8月頭に収録を行いました。ところが前編後編を公開直後、参考にした資料の一部に誤りがあったことが判明し、急遽修正・補足編を追加で撮って編集していただく…という大変な作業を、のらクラシック部さんには突貫でやっていただきました。お

Satoshi Enomoto
10月14日読了時間: 2分


【出演後記】副次的文化系歌曲祭Vol.4に参加してきました
9/27に開催された副次的文化系歌曲祭Vol.4に、今回は伴奏者ではなく歌い手(ピアノ弾き歌い)として参加してきました! Vol.2とVol.3では伴奏と作曲で参加していたのですが、それ以後編曲にかまけて歌モノを作曲していませんし、またここ2年ほど自分の関わるコンサートで...

Satoshi Enomoto
10月1日読了時間: 3分


【雑記】言語を学ぶことについて
牛歩ではあるものの、ここ半年ほどで語学を独習しています。具体的にはドイツ語と韓国語です。 研究している音楽がドイツ寄りなのでドイツ語に触れる機会自体はこれまでも少なくなかったのですが、それは特段日常会話などではないため、いっそのこと基本からやってみようと思い立ちました。...

Satoshi Enomoto
8月30日読了時間: 4分


【音楽史】「十二音技法の考案によって無調音楽が生まれた」という言説は誤り
これは一度や二度ではないのですけれども、タイトルにも書いた「十二音技法の考案によって無調音楽が生まれた」という説明・解説を方々で見ます。カジュアル向け音楽史解説書然り、音楽系YouTuberの解説動画然り…もしかすると他のところでもそのように言われているのかもしれません。...

Satoshi Enomoto
8月26日読了時間: 7分


【雑記】「ニューメディア」は嘘つきだ!:陰謀論を引き摺り降ろせ
僕は普段からブログやSNSを駆使して活動の広報を行っています。チラシも蒔いているにはいるのですが、しかしやはりどちらかと言えばネット上の広報の方が集客には繋がっているように感じます。なにせやっている音楽がニッチなもので、むしろニッチなものを自発的にサーチしているような人に発...

Satoshi Enomoto
8月21日読了時間: 7分


【雑記】千鳥ヶ淵戦没者墓苑へ参ってきました
8/15には追悼行事もあるだろうと考えて別の日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑へ行ってきました。所在地は以前から知っていたものの、実際に参ったのは今回が初めてでした。 戦死した曾祖父の墓参りにはここ数年行っているものの、曾祖父の場合は身元もわかっている上で遺骨も戻ってきましたし、認知...

Satoshi Enomoto
8月17日読了時間: 2分


【社会】"私の戦後80年宣言"
日本共産党の田村智子委員長が「皆それぞれの『私の戦後80年宣言』を考えてみてはどうか」という旨をInstagramの配信で発信していたのを見たので、それに対する考えも併せて自分なりの『私の戦後80年宣言』を書いてみる次第です。...

Satoshi Enomoto
8月15日読了時間: 8分


【雑記・合唱】合唱の技術向上のために独唱をやってみた方がよいかもしれない:合唱をするための、合唱から自由である意志力
僕自身が合唱をやっているので合唱視点で書いているものですが、「合唱の技術向上のために」は「歌唱の技術向上のために」と書いてしまってもよいかもしれません。ともあれ、この記事では合唱における音楽技術的短所に言及することになるでしょう。...

Satoshi Enomoto
6月15日読了時間: 5分


【ソルフェージュ】ピアノにおいて音階を練習することの意義:音階を掬い上げる行為
多くのピアノ学習者が各調の音階(スケール)を弾く訓練を経験することでしょう。かのハノンにも24調のスケール練習が載っている他、チェルニーなどの練習曲にも要素として度々登場します。バルトークさえも《ミクロコスモス》に音階練習を直接載せていないというだけで「他の教材に載ってるか...

Satoshi Enomoto
6月11日読了時間: 4分


【雑記】祖父がギターを独習していた時に使った資料類を発掘した
昨年亡くなった祖父が若い頃に趣味でギターを弾いていたらしいという話は生前から知っていました。そのギター自体も僕が実家にいた頃から目の届くところに剥き出しで転がっていましたから、それが誰のものかを聞けば自動的に祖父の名前が出るわけです。榎本家には趣味での楽器経験者が多いものの...

Satoshi Enomoto
5月31日読了時間: 4分


【雑記】音楽家の奇人変人エピソードを面白いとは思えなくなった:他者の性格や私生活を面白がることの暴力性
……批評家たちは私のことを変わり者として紹介しています…… ……それは真実ではありません…… ……私は変わり者ではありません…… ……そうでありたいと思ってもいません…… ……私は陰気な人間です…… サティ(秋山邦晴・岩佐鉄男 編訳) 『卵のように軽やかに...

Satoshi Enomoto
5月19日読了時間: 6分
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