top of page

検索


【音楽理論】楽語の意味を元になった言語としての意味に求めてよいのだろうか
楽譜を読む時、様々な楽語が目に入ってくることでしょう。それらの楽語の意味を知るために、我々はまず楽語辞典を引くことになります。検索エンジンで調べる方もいらっしゃるでしょう。出てくる情報の多少の差はあれど、概ね共通した「楽語の意味」には辿り着けることと思います。 ここで好奇心の強い方は、その楽語の元となっている言語上の意味についても調べようとするかもしれません。楽譜上の言葉の多くはイタリア語ですが、ドイツ語やフランス語などもあるでしょう。楽語についての辞書ではなく、言語についての辞書も引くことになるわけです。 言語としての元の意味を知ることによって「だから楽語としてはこのような意味になるのか」と納得できる場面も多々あると想像されます。それ自体は学びとして結構なことです。 ところが、問題提起はここからです。果たして 楽語の意味は言語の意味と本当に同じでしょうか? 「言語の意味から楽語の意味が導き出されているのだから、意味が異なるわけがないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、楽譜における楽語の用いられ方は、会話や文章における言語の用いら

Satoshi Enomoto
10月31日読了時間: 7分


【感想】大内暢仁『バッハへの道 そして バッハからの道 Vol.2』
10/25に友人のピアニスト 大内暢仁さんのコンサート『バッハへの道 そして バッハからの道 Vol.2』を聴いてきました。これは必ず行かねばと思って予定を何が何でも調整し、今月は毎週末に東海地方へ行っていた中でもこの日だけは空けました。 以下ネタバレ込みで感想を書きます。 プログラムは大内さんこだわりのリューベックとブクステフーデによって勢い良く滑り出し、このコンサートの世界観を強固に確立します。作品単体が既に興味深いという事実もさることながら、それよりも強烈に印象付けられるのはブクステフーデが暮らしたリューベックの町という、このプログラムの始まりとなる舞台です。 大内さんの演奏技術か、作品の工夫か、会場の構造か、あるいはそのどれもかが要因となって、大内さんのピアノはオルガンのように響きます。単音の物理的音色がオルガンに似ているというのではなく、疾駆するパッセージから発生する響きの総体がオルガンの幻影に限りなく接近していくようであるということです。 パンフレットにはゲマトリアに基づく分析が載せられており、実際にそのイマジネーションの通り

Satoshi Enomoto
10月26日読了時間: 6分


【YouTubeコラボ】のらクラシック部『ウェーベルンの代表作《ピアノのための変奏曲》Op.27を徹底解説!』【期間限定公開】
のらクラシック部 『ウェーベルンの代表作《ピアノのための変奏曲》Op.27を徹底解説!』 前編 後編 修正・補足編 プロ・アマチュア音楽家の友人たちが立ち上げたクラシック音楽系YouTuberグループ『のらクラシック部』にお呼びいただきまして、ヴェーベルンの《ピアノのための変奏曲》Op.27について解説トーク(榎本個人の意見も含む)をした動画が期間限定公開となりました! のらクラシック部のメンバーは昨年から榎本が不定期開催で行っている作品解説&実演を試みる試演会『私的演奏協会』、やはり昨年のリサイタル『十二音の色彩 〜シェーンベルク生誕150年によせて〜』、そして今年の『象徴と時間 近代フランス音楽の開拓者たち』にもご来場くださり、普段から大変お世話になっているところです。 今年の5月時点でこの解説動画のお話をいただき、8月頭に収録を行いました。ところが前編後編を公開直後、参考にした資料の一部に誤りがあったことが判明し、急遽修正・補足編を追加で撮って編集していただく…という大変な作業を、のらクラシック部さんには突貫でやっていただきました。お

Satoshi Enomoto
10月14日読了時間: 2分


【感想】Ensemble Toneseek Vol.4『前衛音楽と101年目のシュルレアリスム』
※ネタバレ注意! Ensemble Toneseek Vol.4『前衛音楽と101年目のシュルレアリスム』を聴いてきました。なんだかんだで武満徹の《サクリファイス》もブーレーズの《ル・マルトー・サン・メートル》も生で聴くのは初めてです。それらの体験も楽しみにしつつ、公募で...

Satoshi Enomoto
9月25日読了時間: 5分


【音楽史】「十二音技法の考案によって無調音楽が生まれた」という言説は誤り
これは一度や二度ではないのですけれども、タイトルにも書いた「十二音技法の考案によって無調音楽が生まれた」という説明・解説を方々で見ます。カジュアル向け音楽史解説書然り、音楽系YouTuberの解説動画然り…もしかすると他のところでもそのように言われているのかもしれません。...

Satoshi Enomoto
8月26日読了時間: 7分


【名曲紹介・対訳】ブレヒト『統一戦線の歌』:団結してナチズムに立ち向かうための歌
Das Einheitsfrontlied 統一戦線の歌 詩 Bertolt Brecht (1898-1956) 曲 Hanns Eisler (1898-1962) Und weil der Mensch ein Mensch ist, 人間は人間であるが故に drum...

Satoshi Enomoto
8月13日読了時間: 7分


【メモ】ラヴェル《ボレロ》とサン=サーンス《ピアノ協奏曲第5番》における倍音を重ねる書法
ラヴェルの《ボレロ》は人気作品ゆえにこれまでに何度も演奏され、それに伴って何度も解説が為されて来たことでしょう。その時に必ずと言ってよいほど、楽曲の中盤でチェレスタとホルンの主旋律にピッコロがその第3倍音と第5倍音を重ねる部分についての言及があると思われます。「パイプオルガ...

Satoshi Enomoto
5月18日読了時間: 3分


【探訪記】代々木《春の小川》記念碑:得たものの代わりに失ったもの
高野辰之作詞、岡野貞一作曲による文部省唱歌《春の小川》。この詩のモデルとなった小川には諸説あるものの、その歌碑(記念碑)の一つが代々木にあると聞いて、実際にその場所を訪ねてみました。高野辰之が代々木に住んでいたことが理由となっているようです。...

Satoshi Enomoto
4月18日読了時間: 4分


【演奏会告知】『象徴と時間 近代フランス音楽の開拓者たち』【2025.5.25】
榎本智史ピアノコンサート 象徴と時間 近代フランス音楽の開拓者たち 2025年5月25日(日) 13:30開場 14:00開演 会場 Space & Cafe MonTon 神奈川県横須賀市馬堀町2-2-9 M-SQUARE 1階(旧雑賀ビル)...

Satoshi Enomoto
2月17日読了時間: 3分


【音楽史】2025年にメモリアルイヤーを迎える作曲家
年が変わりましたが喪中ですので新年のご挨拶は差し控えさせていただきます。今年もどうぞよろしくお願いします。 普段から音楽関連のメモリアルイヤーを気にしながら選曲をしている節がありまして、企画の度に一々調べたりもしていたのですが、年始の時点で一通り調べて手元にまとめておけば...

Satoshi Enomoto
1月2日読了時間: 5分


【雑記】作曲家や作品という情報を暗記しようとするよりも、まずは音楽を聴いてほしい
お手元に中学校や高校の音楽の教科書がある方は読んでみていただきたいのですが、ある程度クラシック音楽の鑑賞教材が載っていると思われます。どのような楽曲を学校で鑑賞したかは人それぞれでしょうが、何か強く印象に残っている曲があるかもしれませんし、またあるいは何も印象に残っていない...

Satoshi Enomoto
2024年9月7日読了時間: 5分


【名曲紹介】幸田延《ヴァイオリンソナタ ニ短調》:謎多き単一楽章と、瀧廉太郎の影?
今月末8/31のコンサート『ことうたこん』にて、僕は日本クラシック音楽黎明期の作曲家 幸田延(こうだ のぶ、1870-1946)の代表作の一つである《ヴァイオリンソナタ ニ短調》を演奏します。 僕の出身高校である神奈川県立横浜平沼高校の校歌を作曲したのがこの幸田延という作...

Satoshi Enomoto
2024年8月9日読了時間: 6分


【演奏会告知】榎本智史ピアノリサイタル『十二音の色彩 シェーンベルク生誕150年によせて』【2024.10.19】
2024年10月19日(土) 13:30開場 14:00開演 16:00終演予定 榎本智史ピアノリサイタル 十二音の色彩 ~シェーンベルク生誕150年によせて~ 会場 武蔵小杉サロンホール 神奈川県川崎市中原区小杉町2-276-1 パークシティ武蔵小杉ザガーデン...

Satoshi Enomoto
2024年7月31日読了時間: 4分


【感想】櫻井元希『旋法とヘクサコルド』ワークショップ:便利な方を選んで失ったもの
ヘクサコルドというものに興味を持ったのは、実のところ、ここ1, 2年のことです。やはりきっかけはコダーイラボで西洋音楽史を担当することになったので普段自分があまり意識を向けていない分野も総浚いで勉強し直したことでしょうか。...

Satoshi Enomoto
2023年9月1日読了時間: 7分


【名曲紹介】モーツァルト《アダージョ ロ短調》KV540:天才の陰鬱と深淵
モーツァルトのピアノ作品と聞くと、多く思い浮かべるのは天才の筆致で書かれた軽やかで明快な音楽でしょうか。クラシックに馴染みの薄い方々でもなんとなくイメージする通り、音楽のアイデアを次から次へと考え出せるような人ではあったでしょうから、そのイメージが間違っているわけではないと...

Satoshi Enomoto
2023年5月2日読了時間: 7分
bottom of page


