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【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第13番『幻想曲風ソナタ』》Op.27-1
Op.27-2の方が有名だし分析も楽だしということで先に記事を書いたわけですが、やはり「月光」ばかりを取り上げてその工夫を賞賛しながら、より珍妙な構成をもっている第13番Op.27-1をスルーしておくのはよくないであろうと思いまして早速書くことにしました。 ベートーヴェンのピアノソナタの中で、第13番と第14番は『2つの幻想曲風ソナタ』としてOp.27という作品番号にまとめられています。その内の第14番の方が一般に「月光」と呼ばれて親しまれている一方、第13番はお世辞にも人気とは言えない扱いを受けています。僕でさえ、きちんと第13番がどのような曲であるかを認知したのは音大に入ってからでした。もちろん楽譜は手元に持っていたのですが、意識は向かなかったのです。楽曲構成のイレギュラーぶりとしてはどう考えても特筆すべき位置にある作品なのですが、如何せん音楽としての聴き栄えが地味である上に「月光」のようなイメージ戦略による売られ方もしなかったために、一般知名度は今なお明らかに低いでしょう。 そもそも第13番のどのような点が当時の他のソナタと比べてイレギ

Satoshi Enomoto
3 日前読了時間: 6分


【演奏会告知】私的演奏協会『シェーンベルク《ピアノ曲》Op.33ab』
2026年4月29日(水祝) 13:40開場 14:00開演 15:20終演予定 私的演奏協会 シェーンベルク《ピアノ曲》Op.33ab 解説・演奏 榎本智史 会場 空音舎 東京都大田区南六郷2-5-10 サンアイランド102 京浜急行「雑色」駅より徒歩 入場無料 投げ銭観迎! 定員15名 予約申込 メール info@virtuoso3104.com または当ホームページCONTACTより送信 2月以前はHarmonia Suavisに伴うあれこれ、3月は引っ越しに伴うあれこれですっかり自主企画が滞っていましたので、流石に4月下旬なら大丈夫だろうと考えて会場を用意しました。 お待たせしていたかどうかは分かりませんが、今年も試演会企画『私的演奏協会』シリーズを開催します。今年はソロリサイタルをやらないつもりでいる手前、私的演奏協会は積極的に企画するつもりです。 今回はシェーンベルクの最後のピアノソロ作品である《ピアノ曲》Op.33abを取り上げます。最後のピアノソロ作品であると言っても、作曲年代はaが1929年、bが1931年ですから、まだ

Satoshi Enomoto
3月7日読了時間: 3分


【書評】大島俊樹『階名唱(いわゆる「移動ド」唱)111の音階ドリル集』:「性格」と「力性」を体感する練習
大島俊樹先生の 『階名唱(いわゆる「移動ド」唱)77のウォームアップ集』 についての書評は既に記事にしましたが、昨年2025年の9月に新たなドリル集 『階名唱(いわゆる「移動ド」唱)111の音階ドリル集』 が発刊されました。すぐに注文して手元に置いたわけですが、ようやく書評をまとめたいと思います。 このドリル集自体について述べる前に、手前味噌で恐縮ながら、拙作『混声四部合唱のためのハーモニー・エチュード』の話を書いておきたいと思います。 合唱でピンポイントでハモるための階名唱ドリル集が欲しいと思って作ったのが僕のエチュードであったわけですが、どうしても階名自体の性格というよりは和声法の力学に偏っていて階名自体の性格を歪曲してしまっているのではないかという不安が拭えず、その説明に悩んだ挙句に榎本は大島先生に添削をお願いしたのでした。快く引き受けてくださったどころか、資料まで出して解説までしてくださりました。 その時の話の中で出てきていた観点が「階名の性格(不変の側面)」と「旋法内における力性(変化する側面)」というものでした。...

Satoshi Enomoto
3月2日読了時間: 5分


【ソルフェージュ】異なるものには異なる名前を
階名(いわゆる移動ド)に関して、固定ド派からは「移動ドは同一の音名の音の名前が変わることが非効率である」という旨の批判が届くことがあります。 移動ドを用いる人は並行して日本語なりアルファベットなりの音名を用いており、音名的観点からの不具合は特に感じられるものではありません。僕は小学生の時からドイツ語の音名を使っていますが(師事した先生の指導方針)、派生音も短く言いやすいのでむしろ便利なくらいです。 この点は軽く済ませつつ、本丸は「同一の音名の音に対して様々に変わる階名を考える必要があるのか」ということでしょうか。 これについて例となる図を手描きで作ったので、それを見つつ説明を加えます。 上に5つの調を挙げました。それぞれの調にはE-F、E-Fis、Es-F、Es-Fisという2音のいずれかが含まれています。 固定ドではこれらを全て「ミファ」と歌います。名付けの基準は五線譜上の音符の位置です。歌わずに名前を言うだけならば「ミのフラット」や「ファのシャープ」などと言えることもありますが、歌うともなると変化記号は口に出さないことになります。つ

Satoshi Enomoto
2月27日読了時間: 4分


【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第22番》Op.54
ベートーヴェン中期には愛すべきソナタが色々あると思っています。もちろん既に世間一般においても人気の高い番号がいくつか挙がるでしょう。 しかし榎本個人の好みはそこから若干ズレていることが否定できません。別に有名曲を意図的に嫌っているわけではないのですが、どうにも好きになれない曲があるのも事実です。具体的に名指しすると第21番「ヴァルトシュタイン」と第23番「熱情」。今後気に入る可能性も無くはないですが、現時点ではアンテナに引っかかりません。 ところで、第21番と第23番という大きな意欲作に挟まれて、何やら影の薄そうなソナタがあるではありませんか。 それが今回の記事で取り上げる《ピアノソナタ第22番》です。 この《ピアノソナタ第22番》Op.54が書かれたのは1804年のこと。まさに先述の《ピアノソナタ第21番「ヴァルトシュタイン」》Op. 53と《ピアノソナタ第23番「熱情」》Op.57の間に書かれました。第21番と第23番はいずれも大規模な部類のソナタであり、それらを書いている時期のベートーヴェンのヴァイタリティは推して知るべしというとこ

Satoshi Enomoto
2月25日読了時間: 5分


【音楽理論】楽語の意味を元になった言語としての意味に求めてよいのだろうか
楽譜を読む時、様々な楽語が目に入ってくることでしょう。それらの楽語の意味を知るために、我々はまず楽語辞典を引くことになります。検索エンジンで調べる方もいらっしゃるでしょう。出てくる情報の多少の差はあれど、概ね共通した「楽語の意味」には辿り着けることと思います。 ここで好奇心の強い方は、その楽語の元となっている言語上の意味についても調べようとするかもしれません。楽譜上の言葉の多くはイタリア語ですが、ドイツ語やフランス語などもあるでしょう。楽語についての辞書ではなく、言語についての辞書も引くことになるわけです。 言語としての元の意味を知ることによって「だから楽語としてはこのような意味になるのか」と納得できる場面も多々あると想像されます。それ自体は学びとして結構なことです。 ところが、問題提起はここからです。果たして 楽語の意味は言語の意味と本当に同じでしょうか? 「言語の意味から楽語の意味が導き出されているのだから、意味が異なるわけがないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、楽譜における楽語の用いられ方は、会話や文章における言語の用いら

Satoshi Enomoto
2025年10月31日読了時間: 7分


【感想】大内暢仁『バッハへの道 そして バッハからの道 Vol.2』
10/25に友人のピアニスト 大内暢仁さんのコンサート『バッハへの道 そして バッハからの道 Vol.2』を聴いてきました。これは必ず行かねばと思って予定を何が何でも調整し、今月は毎週末に東海地方へ行っていた中でもこの日だけは空けました。 以下ネタバレ込みで感想を書きます。 プログラムは大内さんこだわりのリューベックとブクステフーデによって勢い良く滑り出し、このコンサートの世界観を強固に確立します。作品単体が既に興味深いという事実もさることながら、それよりも強烈に印象付けられるのはブクステフーデが暮らしたリューベックの町という、このプログラムの始まりとなる舞台です。 大内さんの演奏技術か、作品の工夫か、会場の構造か、あるいはそのどれもかが要因となって、大内さんのピアノはオルガンのように響きます。単音の物理的音色がオルガンに似ているというのではなく、疾駆するパッセージから発生する響きの総体がオルガンの幻影に限りなく接近していくようであるということです。 パンフレットにはゲマトリアに基づく分析が載せられており、実際にそのイマジネーションの通り

Satoshi Enomoto
2025年10月26日読了時間: 6分


【YouTubeコラボ】のらクラシック部『ウェーベルンの代表作《ピアノのための変奏曲》Op.27を徹底解説!』【期間限定公開】
のらクラシック部 『ウェーベルンの代表作《ピアノのための変奏曲》Op.27を徹底解説!』 前編 後編 修正・補足編 プロ・アマチュア音楽家の友人たちが立ち上げたクラシック音楽系YouTuberグループ『のらクラシック部』にお呼びいただきまして、ヴェーベルンの《ピアノのための変奏曲》Op.27について解説トーク(榎本個人の意見も含む)をした動画が期間限定公開となりました! のらクラシック部のメンバーは昨年から榎本が不定期開催で行っている作品解説&実演を試みる試演会『私的演奏協会』、やはり昨年のリサイタル『十二音の色彩 〜シェーンベルク生誕150年によせて〜』、そして今年の『象徴と時間 近代フランス音楽の開拓者たち』にもご来場くださり、普段から大変お世話になっているところです。 今年の5月時点でこの解説動画のお話をいただき、8月頭に収録を行いました。ところが前編後編を公開直後、参考にした資料の一部に誤りがあったことが判明し、急遽修正・補足編を追加で撮って編集していただく…という大変な作業を、のらクラシック部さんには突貫でやっていただきました。お

Satoshi Enomoto
2025年10月14日読了時間: 2分


【音楽史】「十二音技法の考案によって無調音楽が生まれた」という言説は誤り
これは一度や二度ではないのですけれども、タイトルにも書いた「十二音技法の考案によって無調音楽が生まれた」という説明・解説を方々で見ます。カジュアル向け音楽史解説書然り、音楽系YouTuberの解説動画然り…もしかすると他のところでもそのように言われているのかもしれません。...

Satoshi Enomoto
2025年8月26日読了時間: 7分


【企画告知】即興演奏勉強企画『そっから始める即興演奏』【2025.9.28】
即興演奏勉強企画 『そっから始める即興演奏』 2025年9月28日(日)14:30-16:30 会場:空音舎 東京都大田区南六郷2-5-10 サンアイランド102 参加費無料 (投げ銭いただけたらありがたいです) 定員10名 楽器不問・即興演奏経験不問...

Satoshi Enomoto
2025年8月12日読了時間: 3分


【ソルフェージュ】ピアノにおいて音階を練習することの意義:音階を掬い上げる行為
多くのピアノ学習者が各調の音階(スケール)を弾く訓練を経験することでしょう。かのハノンにも24調のスケール練習が載っている他、チェルニーなどの練習曲にも要素として度々登場します。バルトークさえも《ミクロコスモス》に音階練習を直接載せていないというだけで「他の教材に載ってるか...

Satoshi Enomoto
2025年6月11日読了時間: 4分


【メモ】ラヴェル《ボレロ》とサン=サーンス《ピアノ協奏曲第5番》における倍音を重ねる書法
ラヴェルの《ボレロ》は人気作品ゆえにこれまでに何度も演奏され、それに伴って何度も解説が為されて来たことでしょう。その時に必ずと言ってよいほど、楽曲の中盤でチェレスタとホルンの主旋律にピッコロがその第3倍音と第5倍音を重ねる部分についての言及があると思われます。「パイプオルガ...

Satoshi Enomoto
2025年5月18日読了時間: 3分


【雑記】五線譜に近似される音楽:音楽が這った軌跡を想像する
最近は今月末の近代フランス音楽のコンサートへ向けての練習に加えて、来月の湘南合唱祭へ向けても間宮芳生の合唱曲を練習しています。 練習している間宮芳生の《合唱のためのエチュード》は日本を含む世界の民族音楽の要素を採り入れた合唱曲集であり、同氏の《合唱のためのコンポジション》...

Satoshi Enomoto
2025年5月10日読了時間: 9分


【名曲紹介】ホルスト《セント・ポール組曲》:旋法と反復と民謡が織り成す学習用組曲?
作曲家ホルスト(Gustav Holst, 1874-1934)と言えば、一般に知られている作品は代表作である《惑星》ほぼ一作というのが現状でしょう。ここに、弦楽を嗜む人の場合は《セント・ポール組曲》、吹奏楽を嗜む人の場合は《吹奏楽のための組曲第1番》《同第2番》が続くこと...

Satoshi Enomoto
2025年4月8日読了時間: 6分


【書評】大島俊樹『階名唱(いわゆる「移動ド」唱) 77のウォームアップ集 ─ 毎回のレッスンのはじめに ─』
大島俊樹 『階名唱(いわゆる「移動ド」唱) 77のウォームアップ集 ─ 毎回のレッスンのはじめに ─』 http://blog.livedoor.jp/fixeda_moveddo/77_3 現在2025年4月末まで新年度キャンペーン(値引き)中だそうです。...

Satoshi Enomoto
2025年4月3日読了時間: 8分
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