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【雑記】耳を欹てて音楽を味わうこと
自分が面と向かって言われたわけではないものの、「クラシックのコンサートに行かない理由」を書いている人を見かけまして、その内容に反論したいと思うところがあったので今回の記事を書きます。 榎本はクラシック側の人間ですし、今回取り上げた意見に対峙する際に「自分の価値観もやはりクラシック側ではあるな」と再認識したところでもあります。クラシック音楽を代表するつもりも立場もありませんが、それはそれとして個人的に助走をつけて反論しますのでお覚悟を。 まず、冒頭に述べた「クラシックのコンサートに行かない理由」として挙がっていた内容を要約すると以下のようなものでした。 ① 電気的な音量の増幅が無い(PAを使わない)ので音が聴こえにくい。 ② 演奏中に雑談をしたり雑音を立てると注意される。観賞マナーが厳しい。 ③ 飲食しながら観賞できる機会が少ない。 ④ これらの要求をしてもクラシックの音楽家たちが従わない。 …僕の記事の読者の中には、これらの意見に対して既に憤慨した方もいらっしゃるとは思いますが、怒りに任せてこれらの意見を投げ捨てるよりも懇切丁寧に批判してや

Satoshi Enomoto
11月7日読了時間: 8分


【感想】大内暢仁『バッハへの道 そして バッハからの道 Vol.2』
10/25に友人のピアニスト 大内暢仁さんのコンサート『バッハへの道 そして バッハからの道 Vol.2』を聴いてきました。これは必ず行かねばと思って予定を何が何でも調整し、今月は毎週末に東海地方へ行っていた中でもこの日だけは空けました。 以下ネタバレ込みで感想を書きます。 プログラムは大内さんこだわりのリューベックとブクステフーデによって勢い良く滑り出し、このコンサートの世界観を強固に確立します。作品単体が既に興味深いという事実もさることながら、それよりも強烈に印象付けられるのはブクステフーデが暮らしたリューベックの町という、このプログラムの始まりとなる舞台です。 大内さんの演奏技術か、作品の工夫か、会場の構造か、あるいはそのどれもかが要因となって、大内さんのピアノはオルガンのように響きます。単音の物理的音色がオルガンに似ているというのではなく、疾駆するパッセージから発生する響きの総体がオルガンの幻影に限りなく接近していくようであるということです。 パンフレットにはゲマトリアに基づく分析が載せられており、実際にそのイマジネーションの通り

Satoshi Enomoto
10月26日読了時間: 6分


【雑記】フライング拍手・フライングブラヴォーを撲滅せよ
記事タイトルの通り、これらに関して僕はフライング拍手・フライングブラヴォー完全否定派です。自分の演奏に関してはそもそも聴きに来る方々が良心的である場合が多いので(そりゃあこんな奇妙なプログラムをわざわざ聴きに来てくれるのだから)、フライングでこれらが飛んだことは今までにありませんが、しかし自分が聴く側でいる時に同じ客席から飛び出したこれらの被害に遭ったことは何度もあります。 自分の経験した中で特に許せなかった例を挙げるとすれば、ミューザ川崎でシェーンベルク《グレの歌》を聴いた時でしょうか。大編成の合唱とオケから放たれる大音響の残響がまだ全然残っている内にフライング拍手もフライングブラヴォーも起きたのですから、どんなに不快であったかは想像していただければと思います。ジョナサン・ノットはまだ手を下ろしていませんでした。フライングで拍手やブラヴォーを飛ばす人々はいかにもコンサート馴れしているような素振りをしつつも、指揮の見方は知らないようです。 演奏者側からすると、どんなに早く拍手やブラヴォーが起こったとしても、それが音楽を全部味わい切った直後のも

Satoshi Enomoto
10月17日読了時間: 6分


【感想】東京都交響楽団 第1020回定期演奏会Aシリーズ:響きを全身で体感する
下野竜也 指揮 東京都交響楽団 水谷晃 コンサートマスター 東京混声合唱団 平川範幸 合唱指揮 曲目 ミュライユ《ゴンドワナ》 夏田昌和《重力波》 黛敏郎《涅槃交響曲》 久々に東京都交響楽団の定期演奏会を聴きに行きました。というのも、黛敏郎の《涅槃交響曲》を生で聴きたかっ...

Satoshi Enomoto
5月2日読了時間: 6分


【名曲紹介】ホルスト《セント・ポール組曲》:旋法と反復と民謡が織り成す学習用組曲?
作曲家ホルスト(Gustav Holst, 1874-1934)と言えば、一般に知られている作品は代表作である《惑星》ほぼ一作というのが現状でしょう。ここに、弦楽を嗜む人の場合は《セント・ポール組曲》、吹奏楽を嗜む人の場合は《吹奏楽のための組曲第1番》《同第2番》が続くこと...

Satoshi Enomoto
4月8日読了時間: 6分


【雑記】メロディもハーモニーもある音楽を、なぜ「メロディもハーモニーも無い音楽」と捉えてしまうのか
20世紀に入って調性が希薄化してきた音楽について、「我こそは音楽を知っているぞ」という顔で音楽を解説したがる人間が「メロディもハーモニーも無い音楽」などという表現を用いて評するという場面を時々目撃します。いや、そのような知ったかぶりの人間たちをさておいても、すっかり流布した...

Satoshi Enomoto
2024年9月27日読了時間: 5分


【雑記】作曲家や作品という情報を暗記しようとするよりも、まずは音楽を聴いてほしい
お手元に中学校や高校の音楽の教科書がある方は読んでみていただきたいのですが、ある程度クラシック音楽の鑑賞教材が載っていると思われます。どのような楽曲を学校で鑑賞したかは人それぞれでしょうが、何か強く印象に残っている曲があるかもしれませんし、またあるいは何も印象に残っていない...

Satoshi Enomoto
2024年9月7日読了時間: 5分


【感想】『湯浅譲二 95歳の肖像 合唱作品による個展』
8/12に豊洲シビックセンターにて開催された『湯浅譲二 95歳の肖像 合唱作品による個展』を聴きに行ってきました! この当日は湯浅譲二まさにその人の95歳の誕生日でしたが、残念なことに作曲者は先月に亡くなり、湯浅譲二の音楽がもたらしたものを再認識するための追悼演奏会となり...

Satoshi Enomoto
2024年8月17日読了時間: 8分


【感想】『内藤コレクション 写本 ─ いとも優雅なる中世の小宇宙』
僕が団員として所属する合唱団DIOは今年、中世・ルネサンスあたりの時代の音楽に積極的に取り組んでいます。そのような演奏活動をしようと決めたからというわけではなく、単に合唱団内のパート人数比を考慮した結果、演奏に適する編成が自動的に中世・ルネサンス時代に偏ったという次第でした...

Satoshi Enomoto
2024年8月16日読了時間: 4分


【雑記】ゲンダイオンガクを面白可笑しく扱き下ろすのではなく
最近、ゲンダイオンガク(現代というほどでもないのにそのように呼ばれて敬遠されている音楽)の話題がその雑な認識故に炎上して、それに便乗して別の雑な認識を述べるというムーヴが繰り広げられましたが、そろそろ鎮火してきたようなので個人的にも言及しておきましょうか。...

Satoshi Enomoto
2024年8月3日読了時間: 6分


【雑記】「百聞は一見に如かず」と毎日復唱せよ!
こうして文章を徒然に書いたりネットを運用したりすることによってコンサートやレッスンの宣伝広報にしようなどということを企んでいる身にとって大きなブーメランになることを書きたいと思います。なお、それらを貶める意図はありません、念のため。...

Satoshi Enomoto
2024年4月9日読了時間: 3分


【感想】Lutherヒロシ市村『シューベルト:冬の旅』
Lutherヒロシ市村先生のリサイタル『シューベルト:冬の旅』を聴きに行ってきました。伴奏は伊藤那実さん、翻訳・字幕は三輪えり花先生です。 日頃は有名曲に対しては「またあの曲をやるのか」などと感じてしまって食指の動かない榎本ですが、シューベルトの《冬の旅》のような作品ともな...

Satoshi Enomoto
2024年2月20日読了時間: 7分


【感想】土居真也&大内暢仁『名曲!迷曲?ピアノデュオコンサート』
本日はこちらのコンサート、『名曲!迷曲? 土居真也・大内暢仁 ピアノデュオコンサート』を聴いてきました! 土居真也さんははるばる福岡からいらっしゃったようです。 いわゆる知名度の高い作品とそうでない作品を交互に並べたプログラムでした。普段の大内さんの領分を知っているので「有...

Satoshi Enomoto
2023年9月24日読了時間: 3分


【感想】グラス《浜辺のアインシュタイン》:寄せては返す、波あるいは夢
10/9(日)は、神奈川県民ホールでのグラスの《浜辺のアインシュタイン》公演を観に行ってきました! 作曲者フィリップ・グラスと言えば、ミニマル・ミュージックと呼ばれる作風(グラス自身はこの呼称に否定的らしい)を始めた作曲家の一人であり、その中でもオペラの作曲家として知られて...

Satoshi Enomoto
2022年10月16日読了時間: 4分


【雑記・音楽史】コダーイラボ西洋音楽史2021-2022、完結。
7/28の講座をもちまして、コダーイラボ2021-2022年度西洋音楽史講座(全11回)が完結しました。あらためまして、受講生の皆様、主催の山口雄人さん、ありがとうございました。 1年前の募集記事にも書きましたが、この講座の講師を打診された当初は、引き受けるかどうかをかなり...

Satoshi Enomoto
2022年8月5日読了時間: 5分
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