• Satoshi Enomoto

【雑記・音楽史】コダーイラボ西洋音楽史2021-2022、完結。


 7/28の講座をもちまして、コダーイラボ2021-2022年度西洋音楽史講座(全11回)が完結しました。あらためまして、受講生の皆様、主催の山口雄人さん、ありがとうございました。


 1年前の募集記事にも書きましたが、この講座の講師を打診された当初は、引き受けるかどうかをかなり躊躇したどころか、ほぼ消極的であったことが否定できません。僕は音楽学者ではないし、西洋音楽史に満遍なく精通しているわけでもありません。大学で学んだざっくりとした通史と、大学院で研究した表現主義周りの話がせいぜいといったところでした。


 山口さんの熱意に圧されて引き受けてしまったものは仕方無い。コダーイラボの打診前から学び直していた西洋音楽史のペースを急激に上げることになったわけですが、結果的には自分自身もめちゃくちゃ勉強になりましたし、他人に解説する時にどのように言えばよいのかということを毎度反省して課題も見つかったと思います。自分としても良い経験になりました。


 次年度のコダーイラボの講座は1回~2回完結の講座が続くスタイルのものになりまして、榎本の講座は一旦無しになります。これでとりあえず1年間は気楽になるぞといったところですね。それでも手元には11回分の西洋音楽史講座のスライドと、コダーイラボの報酬をほぼそのまま注ぎ込んで揃えた資料が残りましたので、これを材料にしてまた色々と研究できることも増えるというものです。ここからの1年間はパワーアップ充電期間と考えます。



 

 自分なりにも今回のコダーイラボの準備を通して興味が湧いた分野もあったので、抜粋して記しておきたいと思います。


・中世音楽の区分。自分が大学1年生の時に学んだものとは認識が変わっている箇所や、そもそも大学では割愛されていた部分があったことを再確認した。


・中世音楽は現代から見てもアクロバットな音楽が多かった。当時の西洋の社会情勢の厳しさも一因かもしれない。特にその末期。


・ルネサンス時代の世俗音楽。いわゆる「闇鍋合唱曲」のルーツの一つはここに求められてもいいかもしれない。


・イングランドの作曲家たちとオランダのスウェーリンク。曲や演奏技術にもよるが、一部のピアニストが実行している通り、モダンピアノでの演奏にも耐え得る作品が多く眠っていると思われる。それこそスウェーリンクの作品はコダーイラボでの講義があった期間内に弾くことができた。今後も要発掘。


・ルネサンス後期のマドリガーレの書法とその表現力。バロックへの橋渡しも担ったモンテヴェルディの存在。


・バロック時代の各国のオペラ受容。イタリア人気は事実だが、それをそのまま受け入れようとしたところばかりではなく、それそれに試行錯誤があった。個人的に興味が湧いたのはイタリアよりむしろそちら側。


・後世に編集されたものの方にばかり親しんでしまっている可能性があること。正真正銘当時のままとはいかずとも、編集前のものにあたってみることによって感じられる表現はある。


・J.S.バッハ面白いかも(超今更)。バッハから19世紀末までという狭義のクラシックだけを認識しているとバッハは古いものに感じられてしまうけれど、バッハ以前の音楽から見たバッハは最先端にして総まとめなのかもしれない。


・古典派はウィーンの3人だけで作ったものではない。


・近代の音楽は全員が別の方向を向いているように見えて、一方でどのように関連しているか。


・政治による音楽弾圧。特にヒトラーとスターリンのそれによってどのような影響が出たか。音楽が政治を気にしなくても、政治は音楽に介入できる。


・戦後現代音楽がどのように建て直しを図ったか。そこから浮上した音楽への認識問題。音のグルーピング。


 …とりあえずはこのあたりでしょうか。僕自身の演奏活動や作曲活動に関わる観点も無くはないと思っています。そうと明言することは無いでしょうが(意識的なものとは限りませんし)、此度のコダーイラボでの研究を土台にしたコンサートや作品を世に問うかもしれません。そちらも楽しんでいただけたらと思います。


 

 当該年度のコダーイラボのクラスには、部分ごとには知っていても初めて西洋音楽史を通して学ぶ方もいらっしゃいましたが、一方で過去に西洋音楽史を学んだことはあるけれども復習のために受講したという方もいらっしゃいました。


 僕だって本業はピアノ弾きであるわけでして、ほぼ似たような立場じゃないか、大丈夫かこれは…などという気持ちにもなったのですが、講座が全て終わった後にはご満足いただけた旨のメールが届きまして、とても嬉しくなりました。


 個人的には学生時代から音楽史や和声法など必修の音楽教養科目はかなり楽しんで勉強していた方ではありました。ただ、周囲の大多数の学生たちが苦行のように取り組んでいた様子も見てはいました。教科書やノートを丸覚えして試験で点数を取らねばならないと思うからそうなってしまうというのも、仕方ない面もあるのかもしれません。


 学ぶことによって掴めるようになる、受け止められるようになるものがあると実感できることが、その勉強を楽しいと思えるようになる一つの要因ではないかと思います。できるだけそのような方針で講座も展開してみましたが、西洋音楽史を学んだことによって様々な音楽が結び付く面白さを感じていただけていたら幸いです。


 なんだかんだで僕も西洋音楽史を教えながら学び直してみて面白かったと思っています。コダーイラボでも他のところでも、何かお手伝いが欲しいところがありましたら気軽にお呼びください。



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