【楽譜販売】J.シュトラウスⅡ世《東方のおとぎ話》Op.444 ピアノ連弾編曲
- Satoshi Enomoto

- 7月14日
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更新日:8月27日






【BOOTH】
ヨハン・シュトラウスⅡ世《東方のおとぎ話》Op.444 ピアノ連弾編曲
【Piascore】
J. Strauss II《Märchen aus dem Orient》Op.444 ピアノ連弾編曲
しばらくブログを更新していなかったのは色々なことが重なったからなのですが、その色々重なった要因のうちの一つがこの編曲の制作でした。書いても書いても「ここの部分やっぱりこうした方がいいか…?」という検討事項が多発して常日頃からこの編曲のパズルがずっと脳内に展開されていたほどでした。流石にずっと容量を食われているのも良くないので集中的に作業して出力に漕ぎ着けた次第です。
そんなわけで、勝手にヨハン・シュトラウスⅡ世生誕200年企画第4弾としてワルツ《東方のおとぎ話》Op.444のピアノ連弾編曲を制作致しました。19ページ、リピートを全部行った時の演奏時間は8分に及びます。そんなに難しいテクニックは要求しなかったはずですが、如何せん尺が長めであるためハードルはあまり低くないかもしれませんね…
このワルツはウィーンフィルのニューイヤーコンサートでは2009年にバレンボイムの指揮で、次いで2015年にメータの指揮で演奏されています。1892年に当時のオスマン帝国皇帝アブデュルハミトⅡ世に献呈されました。オスマン帝国の近代化を国外にアピールするためにオスマン帝国憲法の制定を命じておきながら、その憲法に組み込んでおいた君主大権で戦争を口実にしてあっさりとその憲法を停止して専制政治を敷いた皇帝です。嫌な先例だな。当時は権威主義社会であったでしょうから、シュトラウスがそこに擦り寄っていったのも時代柄仕方無いことなのでしょうけれども。
楽曲は序奏、4つのワルツとコーダ(第1ワルツの回帰を含む)から成ります。オスマン帝国皇帝に捧げられたこともあってか、序奏、第1ワルツ、コーダにはオリエンタルな雰囲気を感じさせる音使いが見られます。具体的に階名で言えば「リ(レ♯)」の音がメロディに味を出していますね。装飾音のターンのような特徴的な音型はモーツァルトのトルコ風のあれを思い起こさせるかもしれません。
榎本は連弾におけるプリモとセコンドの手の交差を躊躇しない側の弾き手なので、このアレンジでも第3ワルツやコーダに挿入させていただきました(当記事の譜例参照)。プリモが両手のユニゾンでこのメロディを弾くのは大変でしょうから負担軽減の意味もあり、あとは演奏者二人が手を交差するあたりが見映え的にもワルツっぽいかなという大変フワッとした理由もあり、このように書かせていただきました。
今年に入ってからヨハン・シュトラウスⅡ世のオーケストラ作品をいくつかピアノ連弾に編曲してきまして、これで4作を数えることとなりました。宣伝も兼ねて今一度並べておきたいと思います。
♪ペルシャ行進曲 Op.289
♪エジプト行進曲 Op.335
♪ハプスブルク万歳! Op.408
♪東方のおとぎ話 Op.444
[上記]
《ハプスブルク万歳!》は今は無き当時のハプスブルク帝国を讃える行進曲ですが、それ以外の3曲は敢えてシュトラウスが異文化からインスピレーションを得て書いた作品を選んできました。《エジプト行進曲》が本当は「チェルケス行進曲」だったことは過去記事に書きましたが…。
異文化へのリスペクトというよりは恐らくサービス半分にシュトラウスはこれらを書いただろうとも考えられるわけですが、しかしそれでもオリエントに対してシュトラウスが抱いたイメージが音楽に反映されたことは事実でしょう。
排他ではないどころか、異文化をすら取り込んで自らの音楽の要素としていく創作技術には注目すべきものがあります。
特に中東の音楽は西洋音楽世界に度々影響を与えてきました。先に挙げたヨハン・シュトラウスⅡ世やモーツァルトの例だけではありませんし、もしかすると思い浮かんだ方もいるかもしれないバラキレフの《イスラメイ》だけの話ではありません。モンテヴェルディの音楽の中にもその歌唱法が採り入れられているかと思えば、さらにもっと昔、遂には中世のトゥルバドゥールの歌さえもアラブ文化に触発されたものであるという説があります。
自分の編曲によって異文化交流が音楽にもたらしたものを振り返るきっかけが作られればよいなと思っております。







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