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【楽譜販売】J.シュトラウスⅡ世《エジプト行進曲》Op.335 ピアノ連弾編曲

執筆者の写真: Satoshi EnomotoSatoshi Enomoto


BOOTH

ヨハン・シュトラウスⅡ世《エジプト行進曲》Op.335 ピアノ連弾編曲


Piascore

J.Strauss II《Egyptischer Marsch》ピアノ連弾編曲 (ヨハン・シュトラウス2世) / 中〜上級



 

 勝手に J.シュトラウスⅡ世生誕200年企画、編曲第2弾は《エジプト行進曲》Op.335です。先日リリースした《ペルシャ行進曲》と同様、作曲者がパヴロフスクで定期演奏を行っていた時期である1869年の作品です。元のタイトルは《チェルケス行進曲》と言いまして、チェルケス人とは1864年のロシア・チェルケス戦争においてロシアが侵攻し、支配下に置いた少数民族です。ロシアの侵攻から逃れたチェルケス人たちは他国にも離散しました。


 もしかするとこの曲自体にはロシアの戦勝に媚び…戦勝を祝う意味合いもあったかもしれません。ただそれと同時に、多くがイスラーム教徒であるチェルケス人の文化に興味が湧いた面もあったのでしょう。楽曲には(西洋がイメージする)東洋的な雰囲気を醸し出すための音使いが用いられています。階名唱ができる方はぜひ各部分で実践してみていただけると、特徴的な音使いの正体が浮かび上がります。


 この作品が作られた同年にはスエズ運河が開通しました。その祝典に転用するためにタイトルが《エジプト行進曲》に改められた経緯があるようです。チェルケスとエジプトはだいぶ離れていると思うのですが、とりあえずイスラーム文化圏ではあるというガバガバ解像度によってこの改題は成ったということでしょう。ちなみにトルコ行進曲らしいリズムも出てきます。


 特に深くはない経緯を辿っている作品とは言え、そのキャラクターもあってか決して知名度の低い曲というわけではありません。これまでに何度もウィーンフィル・ニューイヤーコンサートに登場し、最近では2019年にもティーレマンが指揮しました。


 何と言っても中間部、オケが声で歌い始める部分は聴き手の意表を突くでしょう。これは僕の編曲においても採用しました。基本的にはピアノを演奏する2人で声で歌ってほしいところですが、難しいようであれば歌う別動隊を用意してもよいでしょう。あわよくば客席も込みで歌ってもらっても構いません。



 そういえば編曲をしていて考えたことが一点あります。この編曲を作るにあたって参照したオーケストラ楽譜とピアノソロ編曲譜では両者ともテンポの変動が書かれていませんでした。しかし曲の最初から最後まで本当に同じテンポで続けると、遅かろうが速かろうが飽きられると思います。書かれていない rit. や accel. を判断して味付けすることはもちろん、セクションごとにテンポを変えることはむしろ自然であると思います。主部は e-moll ですが、E-dur と C-dur の2つのトリオが挿入されます。主調に対するこれらの調に相応しいテンポ設定を考えることも演奏者にとっての大きな課題でしょう。


 《ペルシャ行進曲》と並んで、《エジプト行進曲》はアラブ風クラシック音楽シリーズとして演奏すると盛り上げ役になってくれる作品ではないでしょうか。弾いて歌ってくだされば幸いです。

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