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  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】"影響力"に目が眩む人々


 普段の活動発信と宣伝のために、僕もSNSやHPなどを利用しています。HPとはまさにこのページのことですが、あとはSNSはTwitter、Instagram、そして動画サイトとしてYouTubeも最近比較的動かすようにしています。これまでは自分の足でチラシを撒きに歩いていたのですが、コロナの影響もあってそうもいかなくなりまして、結局デジタルの方に重心が傾いています。


 実のところ、ネット上のやり取りよりもリアルの対面でチラシを手渡し、PRポイントも口頭で喋った方が演奏会に来てくださる確率は高いという感触をもっています。しかし一方で稀にネット上での宣伝が成功して集客が成功する時もありました。全く実生活で接点の無かった人が来てくださるという可能性があることはこちらの強みでしょう。


 宣伝が広範囲にリーチできるに越したことはない…正直なところ僕自身もそのように思ってはいます。情報を追いかけてくれている人たち、つまりフォロワーが多いほどに効果が上がるのもまた事実でしょう。


 

 しかし、どうやらこの意識は軽々と日常から道を踏み外させるようです。なるほど、SNSマーケティングなどという言葉が巷に浸透して久しいですが、その根幹は影響力による商売なのでしょう。第一声に「フォロワーを増やすには」みたいなことを言い始めるわけです。


 商売戦略に疎いもので、ただの聞き齧りと実際に観測した事例だけが僕の手元にある話のタネです。どうやら、「有益な情報を普段から提供してくれる人」というものをまず人々は追うようになりやすいと思われます。それに次ぐのは "甘言" のようなものでしょうか。ためになりそうなこと、耳障りの良いことをたくさん提供してくれる人は、フォローする価値があると判断されるのです。


 ならば、そのようなことを実行すればフォロワーを増やすことが可能になります。たとえそれが本人から発せられる言葉やものでなくても、です。極端に言えば、どこかからTipsを引っ張ってくるだけで充分ということさえあり得るでしょう。そして恐らく、それはフォロワーやフォロワーになる可能性のある人たちの需要に合致してしまっているのかもしれません。


 僕自身の例を出しますと、確かに音楽関連で「そうなのか!」と思われそうなネタを投下すると注目されたりフォロワーが増えたりすることは体験として何度かありました。直近だと「モーツァルトのKV545が実は難しい」というツイートでしょうか。多くの人が弾いたり聴いたりしたことがあるこの作品について、一応はピアニストとして認識されている人間が「難しい」と漏らすことを受けて「そうだったんだ!」と「自分もそう思ってた!」の大合唱が起きるであろうことは、予想できたと言えばできました。



 このツイートと画像は、既にテンプレートとして確立していたものに当て嵌めただけのものであり、ふとした思い付きで作ったものでした。しかし世間には、このような作業を意図的に実行できる人が少なからず存在するわけであります。皮肉を込めて言えば、人々が喜んで飛びついてくるであろうものをきちんと察知しており、それを耳障り良く甘く届けることによって心を掴む様子は非常に見事であると感じます。


 

 フォロワーを増やすことの利点は決して宣伝に有利ということだけに留まるものではありません。フォロワーたちはすっかり信用をもって集まってくるわけですから、例えば「こいつは悪い人間だ!」と差し向けさえすればそのようにフォロワーの心は動かされてしまうのです。つまりは煽動ができてしまうのです。


 たまにとある友人と「宗教を作って信者を集めれば儲けられるよね」などという冗談を話したりしますが、世間では既にこれが妄想の冗談から現実の事象へと移り始めているのかもしれません。インフルエンサーとデマゴーグとは紙一重であるのでしょう。


 そしてこれは個人や小さな界隈に限ったものではなく、恐らく国を左右する政治のレベルにまで及ぶ話題であるように感じます。強い言葉や甘い言葉は意外に軽々と人々を躍らせるものなのでしょう。影響力の外側にいる人間はその様子をしっかりと観察して考えねばなりません。


 渦の中心にいる人物が、意図的に教祖として立っているか、もしくは本人も自らの "影響力" の甘い味にすっかり酔ってしまっているかは、それぞれの場合によるでしょう。いずれにせよ、この力は全く商売の範囲に留めておけるものではなくなる危険性を孕んでいることには間違いないでしょう。


 

 …とは書きつつも、僕は相変わらずSNSも動画サイトもHPも動かし続けることになるでしょう。冒頭に書いたような事情もあって、個人的には治療薬が出るまではこの姿勢を続けると思います。


 ただ、改めて自戒することがあるのも事実です。「なるほど、こうすれば多くの人に届くんだ!」などという考えを一度も持ったことが無いかといえば、はっきり言って何度もあります。闇堕ちしない可能性はゼロではありませんので、まずは調子に乗らないようにしようとは思ったところです。


 音楽家の場合、どんなに甘言を弄したところで、その音楽を聴きさえすれば正体はだいたい露呈するものです。演奏家や指導者ならばその演奏を聴けばいいですし、作曲家ならその作品を聴けばいいでしょう。どんなに賢そうに偉そうに振る舞ったところでボロは音楽と一緒に出てきます。


 発信する人も、それを受け取る人も、"影響力" の魔力に酔わないでいたいものです。



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