top of page
  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】借りすぎたオリンピック

更新日:2021年7月9日


 政府は今月の12日から4度目の緊急事態宣言を発令する調整に入ったようです。期限は来月の22日まで。すなわち、オリンピックは丸ごと緊急事態宣言下に置かれることになるわけです。


 緊急事態宣言下ではオリンピックもできないだろう…僕も以前はそう思っていました。しかし皆様も忘れてはいないでしょう。4月の時点でバッハ会長は緊急事態宣言を「五輪とは関係無い」と言い放っています。そう、オリンピックは緊急事態宣言下でも開催されるのであります。


 これを書いている時点(7/8朝)では、オリンピックを有観客にするか無観客にするかという点が議論されている一方で、早くもコンサートやライヴの中止がちらほらと出始めています。僕も今月は2つの本番(室内楽、歌曲伴奏)を控えておりまして、いずれも会場は都内ですが、会場が利用できる限りは決行するはずです。


 そして飲食業には特に暗い空気が漂っていることを書き残しておきたいと思います。常に休業状態を強いられているところさえあり、支援金も遅れている実態があるようで、僕の周囲の飲食業の人たちの時点でも怒りの声が噴出しています。もしかすると、僕ら舞台系の人間たちよりもその感情は強いものであるかもしれません。


 完全に休業を求めているわけではない、制限をかけているだけだ、と考えるかもしれません。しかし、その制限自体が実際には殆ど致命的なのであります。それならば閉めている方がまだ損害は少ないという状態です。


 そんな状況下でもなお、感染拡大するよりは断然マシだという思いを託して苦境を容認してきたわけです。我慢を強いられることを許容してきたわけです。


 しかし現実に起こったことは、オリンピックに対してのあまりにも甘い対応でした。百歩譲って万全の対策を取ったならばまだしも、濃厚接触者認定の遅れ、関係者の隔離免除、スタッフへのワクチン接種遅れ、「1回目の接種で一時免疫ができる」という謎の楽観論、「発症しても無症状か軽症だから大丈夫」という何の根拠も無い自信、「4年に1度だし頑張ってきたんだから」というまさかの贔屓…安心できないを通り越してもはや恐怖を感じる域です。


 

 緊急事態宣言自体を僕は否定しません。確かに先月の解除からたったの2週間半で新規感染者数はいとも容易くリバウンドの兆しを見せています。感染者の減った去年の夏など、珍しく僕も地方へ仕事に遠征したくらいでした。今年の夏は全く様子が異なるようで、デルタ株にもラムダ株にも警戒は必要でしょう。


 ただ、その制限の矛先がオリンピック以外のものにばかり向いてくるのは一体どのような論理なのでしょうか。「他のものが大きく制限されるのでオリンピックも同様に」あるいは「(感染対策を取りつつ)オリンピックが開催できるのだから他のものも同様に」のどちらかであると思います。


 まあそれでも感染拡大防止のために協力するとしましょう。「生きてるだけで丸儲け」ならぬ「生きてるだけで大赤字」の状態に既に陥っている人たちがいることは考えていただきたいところでありまして、そこには補償が無ければ従おうにも従えないのであります。しかもそれは出ていく経費に追いつけるほどの迅速なものでなければなりません。出ていったものを数ヶ月後に補填する形では間に合わない人たちもいるわけです。


 ようやく与党は再びの現金給付(一律ではなく困窮世帯のみ)をちらつかせ始めたようですが、どうやらそれは秋の衆院選の公約に盛り込まれるようです。渋る理由には給付した現金が貯金にまわったことを挙げていますが、それこそ1度目の緊急事態宣言時には本当に仕事が飛んでしまっていて、その給付されたお金を可能な限り生活費として維持しようとしたら貯金という選択肢になるわけです。後で切り崩す前提の貯金なのであります。我が家などは給付されたお金で税金を払いましたね。


 流石に会場内での酒類販売は "制限する" 側の対応…見送りとなりましたが、IOCの圧力もあり、また政府が "許容する" 側の対応を楽観論で出さないとも限りません。


 あまりにも利権とレガシーに目が眩んで国内を疎かにしているように思います。前首相などは「反日的な人たちがオリンピックに反対している」という言葉さえ放ちました。オリンピックばかりのことではなく日本国内の一般庶民の生活を気にかけてくれと言っても、オリンピックに刃向かった "敵" として認定されるのでしょう。愛国心とはお国の文化や生活を愛する心ということではなく、お国が偉大な存在になることを喜ぶ心なのでしょうか。


 

 恐らくオリンピックはもう止められないでしょう。今から上げた声だけで、IOCも政府も動きはしないでしょう。このまま突き進んだ先に何が待ち受けているかは天のみぞ知るところであります。


 ここに至るまでに貸したもの、払ったもの、差し出したものがあまりにも多いです。そしてここから後にも、貸さされるもの、払わされるもの、差し出さされるものは色々出てくるでしょう。


 スポーツに恨みはありませんし、そこに制限を要求することが自分たちの活動や生活に制限を敷くことに繋がることはわかっています。それでも、多くの人たちから多くのものを借りすぎた、まもなく決行されるであろうオリンピックに "反対する" ということだけは表明しておきたいと思います。


 

 7/9朝、追記。


 どうやらオリンピックは無観客となったようです。チケット収益や販売収益は吹き飛びますが、感染拡大防止を考慮した一応の妥協点とは言えるでしょう。むしろIOCを相手にそこまで持ち込めただけでも良かったかもしれません。

タグ:

閲覧数:167回
bottom of page