top of page
  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】知名度と人違い


 音楽を仕事にしている都合上、正直に言えば知名度があることに越したことはないと思います。打ったコンサート企画がそもそも情報として相手に届くかどうか、ピアノの弾き手が必要になった時に自分の顔を思い浮かべてもらえるかどうかなどということに直接繋がってくるからです。


 僕の場合は事務所から仕事を貰うこともあるので、その時だけは知名度云々をスルーして仕事をすることもできるのですが、それも全体から見るとやはり少数でして、大抵はコネクション、その次に自分の広報活動でようやく仕事をしているという状態です。


 なるほど、大学院時代に教授が「音楽の仕事はコネだと思うでしょう? そうです、コネです」とぶっちゃけていたのを思い出しては年々実感するところであります。



 

 つい先日、面白いことが起こりました。


 その日はオフだったので、一日中ピアノを弾いていました。夕方頃に呼び鈴が鳴りまして、祖母が応対に出たので僕は再び引っ込んでピアノを弾き始めました。


 すると何やら玄関の方から祖母の呼ぶ声が。「町内がどうたらって」などと言うものですから、町内会関係の方かもしれないと思い、すぐに出ていきました。


 実は町内会役員を務めて3年目になります。コロナ禍突入直後の4月に、仕事どころか教室採用の面接まで殆ど全部吹き飛んでしまい、やることがほぼ無くなってしまった時期にたまたま頼まれたので引き受けたのでした。狭い町内ですし高齢者も多いですから、たまに町内会関連の質問を直接家に聞きに来るなんていうこともあまり珍しくはありません。


 そんなわけで出てみると、なんだか事情が違っていたのでした。


 玄関先にいた方は町内では見ない顔でした。話を聞きますと「クラシックなのかジャズなのかジャンルはわからないが、先日◯◯(僕の住む地域の旧名)にピアニストがいるという話をタウンニュースで見たので探し歩いていた。近所の人に尋ねたら『それは榎本智史のことではないか』と言われ、家も案内されたので来た」とのこと。


 まず、僕がタウンニュースに載ったことは無いので、この方の探しているピアニストではありません。しかし横須賀市内のピアニストならともかく、n丁目まで指定する旧名で呼ばれる地域の範囲内、つまりうちの町内限定ともなると、僕ともう一人電子オルガンの指導者がいる以外には存じ上げません。隣町であればモントンのオーナーである増田さんの名前も挙がるのですが…


 結局、モントンに行けば色々な演奏家がコンサートをやっている旨を紹介しました。横須賀市内で活動している演奏家ならばそこに足を運ぶ可能性は割と高いでしょう。


 

 それにしても、近所の方々が「うちの町内のピアニストと言えば榎本だろう」と判断したという話には思わず笑ってしまいました。我が家には防音設備が全く無いため、実は練習の音が近所に駄々漏れしています。その上さらに、今年の1月にモントンで古典派ソナタのコンサートをやった時には、町内会の回覧板にコンサートのチラシを挟んで回覧していました。現職の町内会役員がピアニストで、しかもド地元でコンサートをやるという構図も面白いでしょう。来なかった人たちの間でも印象には残っていたようです。


 コロナ禍突入以降、どうにかネット上での広報活動だけでもと試行錯誤をしましたが、どうやらまだまだ自分の手足を使って広報をしていくのは効果的であるようです。自宅での練習が強制生配信(物理)の状態であることも要因の一つではあるでしょうが、自分の音楽以外にも色々なところへ顔を出していくことの重要さを再確認した次第です。


 あまり公衆の面前に面白人間として現れたいわけでもないのですが、根が他人嫌いである手前、そういうことを意図的にやって丁度良いという可能性は否定できないと思いました。



タグ:

閲覧数:39回
bottom of page