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  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】練習に休憩を挟むこと


 最近、とある記事が話題になりました。スキルの上達は、練習中ではなくその休憩中になされるという旨のものです。


 僕は脳科学については全くの門外漢であり、その実験方法や現象についてとやかく言及することはできません。


 その一方、一晩寝て起きたら弾けるようになっていた経験は確かにあり、また休憩を挟むことが良い効果をもたらしているであろうこともなんとなく体感していました。記事中にあるような "頻繁" とまでは言わないまでも、普段からある程度の休憩を挟むようにはしています。


 

 ピアノ弾きは恐らくあらゆる演奏者の中でも特に長時間の練習を当然のように行う部類の人々だと言っても異論は少ないでしょう。一日に7時間だの8時間だのという話は聞かれますし、その間殆ど休憩無しで練習し続けるような人も珍しくはありません。


 ただ、余程の体力と並外れて持続する集中力でも持っていない限りは、長時間の練習は雑さを招くでしょう。休憩を挟むことによって、蓄積された疲労を取り除き、削がれた集中力を取り戻すことができることは確かであると考えます。過酷な練習時間を誇っても仕方ないということは言えるでしょう。


 件の記事にあるように、頻繁な休憩をとるということを試みるのは悪いことではないでしょう。確かに楽器に触れている時間は短くなるでしょうが、楽器に触れて鳴らすばかりが音楽の練習ではないはずです。


 どんな音楽を作ろうか、どんな技術を用いてそれを実現しようか、といったアイデアは、忙しく体を動かしながらでは浮かんでこないものです。一旦距離をおいて落ち着くということは大切でしょう。それによって改善策が浮かんだりすることもあるかもしれません。


 休憩というよりも、あくまでも頭の整理や身体の疲労回復と見るならば、まるでサボっているような罪悪感は感じずに済むでしょうか。


 

 ところで、フィンランドのトロンボーン奏者 リンドベルイが、彼自身の音楽活動を含む生活ルーティーンを動画にアップしていました。彼はトロンボーン奏者としての他にも作曲家・指揮者としても活動していて、これらの活動をどのように回すのかということには興味を持ちました。


 これがまた面白く、まずトロンボーンの練習を24分しか連続して行わないという方針を貫いているのです。間に6分の休憩を入れ、あるいは指揮の練習や作曲、読書、さらには体力作りのための運動を挟むこともあります。


 つまり、一日の中でも時間を細かく分けて練習を行っているのです。なるほど、まとまった練習時間を取ろうとしがちな考え方とは逆の方向です。確かにその方法であれば「短い時間だけ集中して」練習に取り組むことができ、脳科学の話を抜きにしても効率が非常に良さそうに思えます。


 僕自身の話をすると、疲れるからという理由で休憩を挟むことは少なくないですが、さすがに30分に満たない時間で休憩を挟むことは無く、また一日の中で練習時間が分散することはあまり無いです。午前中は専らレッスン教材を作ったり編曲をしたり書類仕事をしたりしていて、午後から夕方のレッスン前までピアノを練習する場合が殆どでしょうか。


 ちょっと自分を使って人体実験でもしてみましょうかね。


 

 どんな練習スタイルが効果的なのかという結論は出さないまでも、世間的には長時間の練習を是とする考え方が浸透しているようには思います。僕も学生時代以前はそのように考えていましたし、実際に長時間の練習を立て続けに行っていました。


 しかし、やはり疲労は蓄積し、集中力はどうしても切れてくるものです。一般人より耐えられたとしても、全く限界が無いわけではありません。


 それに加えて、あまりにも休憩無しで長時間の練習を続けると、だんだんと音楽に対する視野が狭まり、音楽が悪い意味で固まっていく感触がありました。酸素濃度が薄くなり、身動きが取れなくなってくるようなものです。


 少なくとも、この機会に乗じて休憩を挟む習慣を作り、無闇矢鱈な長時間の練習を細切れに分散させていくメリットはあるように思います。過酷な練習によってダメージを負うこともあるわけです。どのような具合がちょうど良いかは人それぞれ、また場合それぞれだとしても、「意図的に休憩を挟む」ということを試してみる価値はあるかもしれません。

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