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  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【コンサート後記】Razbliuto Vol.2:ヴェリズモ・オペラが問いかけるもの


 2/28、緊急事態宣言下でありながらもほぼ満席のお客様にお越しいただきました。ありがとうございました。



 前回のコンサートがなんと4年前でして、忙しさにかまけて活動が停止していたのですが、夏の共演からコンサート企画が持ち上がったのでした。やはり新型コロナの影響で日時設定も様子を見つつでしたし、プログラムもそこまで統一性には拘らず、川上さんが現時点で歌えるアリアをありったけ出し、そこに僕が関連するピアノ曲を加えていくという形で決定しました。裏話ですが、マスカーニをプログラムに加えたのは本番5日前です。


 そんなわけでプログラムの半分以上がヴェリズモ・オペラのアリアとなりました。ヴェリズモとは、市井の人々の日常生活の暗部や残虐な面まで直接的に描こうとする現実主義のこと。激重です。オペラ特集と銘打つなら普通もっとエンタメ的な軽い曲を並べるだろうに、と言われるくらいだと思います。申し訳程度に聴き馴染みのありそうな曲も入れましたが、さて、どれ程まで重さを緩和できたか…


 ところで、オペラの主要人物の死亡率はかなり高いと思います。今回のプログラムの中でも、《ラ・ボエーム》のミミ、《トゥーランドット》のリュウ、《海賊》のメドーラ、《ワリー》のワリー、《道化師》のネッダ…今回取り上げたオペラの中で死なない役はリタだけでした。《トリスタンとイゾルデ》でも二人は死にますし、《カヴァレリア・ルスティカーナ》もあの美しい間奏曲のくせにやっぱり人が死にます。


 別にオペラで人が愛に翻弄された挙げ句に死ぬことの惨さ自体を見てほしいわけではないのです。むしろフィクションであっても、音楽に乗って届けられる凄絶な心を聴き手は受け取るものだと思っています。なんでそんな痛みを伴う話をわざわざ観なければならないのか…などと思った時期もありましたが、その痛みこそが味わいなのではないかと最近になって考えるようになりました。不倫も殺人も不道徳と言ってしまえば蓋をすることは出来ますが、そんな修羅場な状況下で人間がどのような心で生きるか(そして死ぬか)を観るようにしてみると、蓋をしがちな現代の人間にもオペラは力と痛みをもって訴えてくるのではないかと思いました。


 そんなわけで、冬いっぱいで取り組んだオペラ特集は一区切りです。Razbliutoが次にいつ何をやるかは全く決まっておりませんが、どうか気長にお待ちください。改めまして、ありがとうございました。

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