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  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【対訳】フライシュレン『心に太陽を持て』:信長貴富《くちびるに歌を》の原詩

更新日:2023年12月3日

Hab' Sonne im Herzen

Cäsar Flaischlen(1864-1920)


Hab' Sonne im Herzen,

ob's stürmt oder schneit,

心に太陽を持て

嵐の日も吹雪の日も


ob der Himmel voll Wolken,

die Erde voll Streit!

空が雲に覆われていても

地上が争いに溢れていても


Hab' Sonne im Herzen,

dann komme, was mag!

心に太陽を持て

そうすれば何が来ようと大丈夫だ


Das leuchtet voll Licht dir

den dunkelsten Tag!

それは光で照らすだろう

あなたを どんなに暗い日にも



Hab' ein Lied auf den Lippen

mit fröhlichem Klang,

くちびるに歌を持て

喜ばしい響きで


und macht auch des Alltags

Gedränge dich bang!

日常の抑圧が

あなたを不安に苛んだとしても


Hab' ein Lied auf den Lippen,

dann komme, was mag!

くちびるに歌を持て

そうすれば何が来ようと大丈夫だ


Das hilft dir verwinden

den einsamsten Tag!

それは乗り越えることを助けるだろう

あなたが どんなに孤独な日をも



Hab' ein Wort auch für andre

in Sorg' und in Pein,

心配や苦悩の中にいる

他者のためにも言葉を持て


und sag', was dich selber

so frohgemut läßt sein:

そして口にするのだ

あなた自身を朗らかにする言葉を


Hab' ein Lied auf den Lippen,

verlier' nie den Mut,

くちびるに歌を持て

決して勇気を失うな


hab' Sonne im Herzen,

und alles wird gut!

心に太陽を持て

そうすれば全てが良くなっていく


 

 来年、信長貴富さんの《くちびるに歌を》を伴奏するので、その原詩の訳を自分でも作ってみました。やはり所々が意訳にはなっていますが。


 最も親しまれている山本有三訳、原詩のニュアンスを尊重した高橋健二訳に比べれば、僕の訳は日本語としてガッタガタかもしれませんが、合唱団の皆さんと一緒に取り組む上において不足はありますまい。


 信長さんが作曲にあたって編集した意訳(著作権があるので載せません)は、これらの第1連~第3連から部分的に抜粋して構成されていることが読み取れると思います。したがって信長貴富《くちびるに歌を》のテクストは「原詩の第2連 + 全体の日本語意訳」という形で成り立っているわけですね。


 意外とドイツ語は平易で韻も踏んでくれているのですが、どうしても日本語にするとバランスが悪くなってしまいますね。特に各連の最後の行などは日本語のシラブルの数を統一するアイデアが浮かびません。山本有三でさえも後にはその部分をカットして意訳していますし、信長さんもカットしています。まあ、全部そこまで厳密に口に出して日本語で歌ってしまうのも野暮というものでしょう。


 "dann komme was mag!"のところは「それならば何が来てもよい」ということだと思うのですが、ちょっとさすがに規模が小さく収まってしまう感じがしたので「何が来ようと大丈夫だ」としました。


 日本語意訳の際にカットされがちな"Das hilft dir verwinden den einsamsten Tag!"の、"den einsamsten Tag"「最も孤独な日を」は「どんなに孤独な日をも」と訳しました。信長さんが混成4部の《くちびるに歌を》の中でテノールだけに"den einsamsten Tag"を歌わせたのはまさに「孤独」を表現するためであると推察します。


 音楽面についても僕なりに色々考えたことはありますが、これから合唱団の皆さんと一緒に音楽を作っていくことになりますから、まだ個人意見を開陳するのは控えておきます。



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