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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】好い印象を持たれるメリット、悪い印象を持たれるデメリット


 始めに断っておきますと、この記事は決してマーケティングやブランディングの助言をしようという目的で書いているものではありません。むしろ、タイトルに書いたような観点がある意味で悪用されるようになっているのではないかということを憂うだけのものです。半分以上は愚痴ですので、さらっと読み飛ばしてください。



 音楽に限った話ではなく周囲の出来事を観察していて、「好い印象を持たれるメリット」、そして翻って「悪い印象を持たれるデメリット」というものが意外なほどに大きいということを昨今は特に感じます。


 これは自分自身の印象ではなく、自分を見ている相手にとっての印象を指します。社会的に罪を犯したわけではなかろうとも、ただなんとなくでも「こいつは嫌いだな」と思われれば、それは「悪い印象を持たれる」ということを意味します。逆に、裏でどんな悪事を働こうとも「好い印象を持たれる」ということはある程度可能でありましょう。


 単純に言ってしまえば「イメージ戦略って大事!」という話にはなるのですが、このダークフォースのお蔭で独裁者が天下を獲るという事態を人類史は何度も踏んでいるわけです。


 なるほど、音楽家の例は既にだいぶ可視化されているでしょうか。既に音楽家自体が供給過多である現代、誰のコンサートに行こうか、誰に仕事を頼もうかということを判定する際に、「こちらが満足できる音楽をやってくれそうな印象がある(実際はわからない)」という観点は比重を増しているかもしれません。


 動画投稿サイトや配信ツールといったものはむしろ実際の演奏を観察できる経路として有用になるでしょう。そこまで聴衆が辿り着いてくれれば、の話ですが。


 そして逆に、学歴や賞歴といった盛りに盛った肩書きから立ち上る印象によって商売が成り立ってしまうことが現実になっていると思います。周囲からのちやほやに旨味を覚えた音楽家が宗教の形をしていないカルト宗教商売に突入していく事例は、起こるべくして起きているのでしょう。幸いにもその手前で「これはおかしいぞ???」と思う人が少なくないので、音楽ではまだマシかもしれません。


 

 イメージ戦略ということを考えると、もしかすると硬派にクラシックの演奏を黙って淡々と公開するよりも、SNSを頻繁に更新して趣味や遊びの話でも挟むなり、バラエティ番組のような動画でも作るなり、あるいは逆方向に音楽に関して真面目で厳しそうな一家言でも投稿するなり(特定界隈には喜ばれる)、面白人間PRに徹する方が、結果的には本業である演奏にも興味を持ってくださる層が一定数出てくるのかもしれませんね。本業とは関係の無いことによって本業の人気が出たり支持者が増えたりするというのもどうかとは思うのですけれども、現にそれで成果が上がるという実例を僕たちは既に見ているわけです。


 一方、「悪い印象」というのは決して素行が悪いというだけではなく、煙たいとか、面倒な奴だ!などと思われることも含んでいると考えられます。特に昨今は批判と罵倒が混同される傾向があり、何かの問題に対する批判や指摘を述べること自体が「面倒事を起こすこと」であるように捉えられることもあります。こうして問題を指摘する人間が「悪い印象を持たれる」⇒「あいつの言うことなど聞くものか!」という反応を生んでしまうわけであります。演奏の練習などは問題を見つけて改善してこそ進歩があるというものですが、世間は決してそればかりではないようです。


 たまに話題に上がる「嫌われる覚悟」という言葉がありますが、見方によっては「嫌われる覚悟」などというものは覚悟と言えるような代物ではないのではなかろうかと考えます。どんな手を使ってでも大衆に好ましい印象を持たせ、好かれることによって自身も巡り巡って利益を獲得しようと画策する人が増えている中で、悪い印象を持たれて嫌われることによる損害は相対的に増大していくのです。無理をしてまで好かれる必要は無いにせよ、そこに頓着しないことは怠惰と捉えられる視点が存在するかもしれないということを、念頭に置くことは一概に悪いことではないでしょう。


 …などとは書きつつも、精神的に非常に疲れる観点を持たねばならなくなったなぁ…と、まだ着地点をうまく見出だせない心境のまま、このへんで終わります。



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