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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記・社会】巡り巡ってくる悪意やら性差別やら


 音楽とはあまり関係の無い雑記。


 僕は3月末で高校の非常勤講師を辞めましたが、時を同じくして、父も仕事を退職したのでした。


 実は父も高校の教員だったのです。既に60歳の時に一旦定年退職はしていたのですが、その後も再任用教員として働いていたのでした。ちなみに教科は音楽ではなく数学。僕が数学や物理を好んで勉強していたことについては父の影響が大きいでしょう。父が教えたクラスだけは数学の定期試験の平均点が高い、みたいなことも起きていたようで、家では僕も父に数学を教えてもらっていました。


 2人とも仕事を同じタイミングで辞め、これから新しい仕事を探すか~などと思っていた矢先に新型コロナウィルスの感染拡大が起きてしまい、新しい仕事探しが難航しているというのが現状です。


 

 先日、父が事務職員の面接を受けに行きました。結果は不採用。え~、と思っていたのですが、その理由は「事務職員は女の仕事」「男には仕事を指示しにくい」というものでした。


 なんだそれは。


 令和2年、こんなことを公衆の面前で言おうものなら全方位から非難が飛んできそうな時勢になったようには思っていましたが、公衆の面前でなければこういうことが言われているという面も、表には出てきていないだけで存在はしているのでしょう。


 この件を読むと、不採用になった人間が男性であるために、まず「男性差別だ!」というように映るかもしれません。しかし翻ってみると、「事務職員は女の仕事」「男には仕事を指示しにくい(=女には仕事を指示しやすい?)」という発想は同時に女性をも貶めているものではないかと思うのです。つまり、女性を下に見ているからこそ、下に見ることができない男性を不採用にするという現象が起きているのであり、これは両性が不利益を被る事例ではないかと僕は考えるのですが…いかがでしょうか。地雷を見抜けたとも言えなくはありませんが…(笑)


 世間では女性差別が未だに問題でありまして、結婚したり妊娠したりで仕事をできない期間があるから採用しないだのキャリアを積ませないだのという酷い話も聞きます。医学部が入試で不正を行った事件も記憶には新しいはずです。

 しかし、世に蔓延る女性差別が男性の不利益になる可能性が無いなどとどうして断言できましょう。それは予想だにせず起こると言ってもいいかもしれません。性別が関係無い仕事の出来が性別に左右されるなんてことはないでしょうし、それがあるとしたら他の要因を疑ってみるのもいいでしょう。それこそ「男性が相手だと仕事を指示しにくい上司」や「女性が相手の時だけ横柄な態度を取る客」、「出産育児で休職すると回らなくなる職務体制」などの方を変えていく必要があるのではないかと思うところですし、そこを改善した方が職場も社会も風通しが良くなるかもしれませんよ。

 

 思い出したことがあるので一つ。


 学生時代、ある時に児童合唱団の伴奏者募集の知らせがあり、報酬もそれなりに良かったので即座に名乗りを上げたことがあります。ところが、その返答は「女性限定です」というものでした。


「ピアノ弾くだけなのに性別は関係無くない!?」と、突如足元に穴が開くような感覚を味わったのですけれども、その理由は「男性だと児童にセクハラをする人がいるから」というこれまた驚きのものでした。おそらく既に前例があったのでしょう、そこで僕が断じてそんなことをしないと誓ったところで意味など無いのです。自分が男性であるというだけで仕事を諦めた苦い経験となりました。


 この条件を提示した側にも、万が一でも児童をセクハラに遭わせるようなことがあってはならないと考えてのことでしょうし、それは非難されることではありません。元凶は前例を起こした人間であり、その悪意が巡り巡って僕にぶつかったということなのです。


 

 差別や悪意を向ける対象が“女性”であるか“男性”であるかということ以前に、“差別”や“悪意”自体が、遠いところにいたはずの誰かに不利益をもたらすことがあるのです。これらについて自覚し、可能な限り無くしていく努力をすることによって、社会の風通しを良いものにすることができると思います。


…とりあえず父は休校措置で授業が遅れている小中高生たちに算数や数学のオンラインレッスンでもやったら需要もありそうじゃないかね…

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