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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】コミックマーケット99に売り子で参加して考えたこと

更新日:2022年1月2日


 コミックマーケット99に売り子として参加してきました!


 普段クラシック音楽の話ばかりしているので、僕がこのような話題を出すのは珍しく思われるかもしれません。古のぬるいオタクであることは、ほぼ付き合いの長い友人だけに知られているところではあります。


 遥か昔の話ながら、実はコミックマーケットに参加するのは今回が初めてではありません。高校生であった2008年冬と2009年夏に一般参加し、音楽系サークルをまわっては同人音楽のCDを色々と買ったものです。現在親交を持っているとあるピアニスト先輩のCDをその時に購入したりもしています。


 コミックマーケットにはクラシックを含む音楽関係の方々も出展されます。僕の知り合いでも複数人の音楽家が参加することになるでしょう。僕が今回売り子で参加したのもその関わりであるように思われるかもしれませんが、音楽系ではない旧知の友人が出展するからと手伝いを頼まれたのでした。


 その友人としては、何かしら僕のインスピレーションにもなるかもしれないと思って頼んだようです。お陰様で、新しい発見や思い直したことがありましたので、メモも兼ねて書いていきます。



 まず気付いたことは、ジャンルごとに集まっていることによって「一通り見てみよう」という心理がはたらくということでした。これだけ多くのサークルが出展しているともなると、一般参加者も自身の興味に基づいてある程度の目星をつけて来場することになるでしょう。それでいて実際に来場してみると、特定のサークルに的を絞っていたはずが、その周りにも意識が向くことになるのです。目星自体は限定していても、新たな発見や出会いをそこから拡げることは可能なのでしょう。


 翻って、僕がやっているクラシック音楽界隈と比較してみると、似通った方向性をもつ複数の音楽家たちが一堂に会する場というものは少ないように思えました。それぞれの音楽性がバラバラであることは何も悪くないのですが、まとまること、集うことによる存在感と多様性の増強は、その連帯自体に利益をもたらすのではないかと考えられました。周囲の音楽家たちを商売敵のように扱うのではなく、一体となって盛り上げていく姿勢が求められるのではないかと思いました。もしかすると、仲間の音楽家を「こいつの音楽はオススメ!」と紹介するだけでも活性化に繋がるのかもしれません。


 

 もう一つの発見は、今回初めて "売り子" 、つまりは一応サークル側に立ったことによって見えたものでした。会場内を行き来する人を見ていると、その個人個人がこちらに興味をどれほど持っているかが、なんとなくわかったのです。物理的な距離が少し遠くても、こちらに興味を持っていそうな参加者には「見本誌もありますよ! どうぞ読んで行ってください!」などと声をかけると、きちんと読んだ上に殆どの方は買っていってくださるのです。一方で、物理的に近くを歩いている人でも、こちらにはそこまで興味を持っていないであろうということは感じ取れたのでした。


 面と向かって観察することによってその興味の度合いを推し量ることができたわけですが、これは相手の顔の見えない広報ツールでは困難なことであるかもしれません。SNSに限ったことではなく、チラシ等でさえもこちらに該当します。相手の生の反応が見えなければ、「もう一押し」でこちら側に来てくれるのか、そうではないのかが判断できず、「もう一押し」だったところのチャンスを逃してしまいがちです。


 ではどのようにすればよかったかということについては、簡単に答えが出るものではありません。相手が抱いている興味の度合いを察知する手段を確立することはひとまず重要課題であると言えるでしょう。


 

 思い直したことが一点あります。


 サークルの皆さんはそれぞれが面白いと信じているものを作品という形で放出していて、それを他の参加者の皆さんは受け取りに行くわけですが、そこには確固たる主観的な意思が力を持っているように感じられます。


 どうしてもクラシックをやっていると客観的な考え方自体もそれはそれで面白かったりしまして、結果的に主観の比重は小さくなってしまいがちです。それを良しとする価値観もありますが、「どうしてあなたはそのような音楽をやりたいと思ったのか?」という肝心な問いには主観が答えねばならないのです。普段も「こりゃ主観を交えすぎたか…?」などと踏み止まってしまうことがあったりもするのですが、もしかすると大多数の人たちから見ればそれは些細なことだったということはないでしょうか。


 その音楽がどのように面白いかどうかという観点はそれとしてさておき、音楽家自身がその音楽をどのように面白いと思っているかということを、主観の主張として提示することは決して悪いことではなく、むしろそれを受け取ることを欲する人たちも存在するのではないかと思い直したのでありました。


 そういえば先述の、高校生の時にもコミックマーケットに参加した際には、それぞれのサークルがそれぞれの信じる面白さを作品にして発表しているのを見て、風通しの良さを感じたものです。十数年越しで、あの感覚の正体に気付いた気がしました。


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