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  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【演奏会告知】『アンサンブルの作り方』

更新日:2021年6月5日


 …というわけで、実に3月末ぶりに公開の場での本番です。シェイクスピアが非常に長い期間に渡ったので、さすがに4月は充電期間にしよう…と思っていたらまさかの新型コロナウィルスの拡大は留まるどころか拡大を続け、緊急事態宣言がどこまで及ぶかも気にしていたので告知がここまでずれ込みました。


 

 では、情報公開です。



『実験企画! 譜読みも合わせも全部見せます! アンサンブルの作り方』


2021年6月12日(土)

18:30開場 19:00開演(20:30終演予定)

会場:武蔵小杉サロンホール 定員24席

投げ銭制(集金箱、Paypayによる電子決済、銀行振込)


プログラム

ベートーヴェン:4手のためのソナタ Op.6


出演

宮口遥名、榎本智史(ピアノ連弾)


予約・問い合わせ

または当サイトContactページより


 

 今回の企画は「演奏会」と銘打つのは不適切かもしれません。プログラムにあるベートーヴェンの連弾ソナタは10分にも満たない短い作品です。それで公演時間1時間半(休憩込み)とは何事かというと、その場で譜読みから始めます。もちろん既にどんな曲であるかは知識として知ってしまっているのですが、二人とも全く練習をしていない状態で本番に臨みます。


 企画コンセプトの時点で演奏会としては事故臭しかしないと思われそうです。したがって、普通の演奏会を期待して来ないでくださいというぶっ飛んだ注意を呼び掛けておきたいと思います。


 そもそも今回やりたいことが、こちらが予め手元で完成させた音楽を披露することではなく、音楽が出来上がっていく過程を肌で感じていただきたいということなのです。


 

 コロナ禍突入以来、アンサンブルの機会は大きく限られてしまいました。リモートアンサンブルという手段は試行されてきましたが、それは奏者として全員分の同時性を保持できるものではありませんでした。作品の発表はできても、決してリアルの代替ではなく、別の手段であったわけです。


 ところで、その観点で見ると、アンサンブルのその場でのやり取りを大事にしていたかという問題はコロナ禍以前にも存在していたことに気付きます。全員が全員とは言いませんが、それぞれが自分のパートを自分の中で完結させてしまって、アンサンブルの合わせはそれらの音楽が噛み合うかどうかを確認するのみ。極端な場合は「メトロノームでこのテンポで合わせよう」などという非情なことまでが行われます。


 百回を百回とも同じように弾こうとすることは音楽として硬化しており、実は褒められたものではないと考えています。その日の気分、会場環境、客席の雰囲気…などによっても音楽は常に変化するものでしょう。アンサンブルであれば尚更、共演者がどんな音楽を仕掛けてくるかということが毎回同じであることはありません。


 いつでも同じ音楽をやろうとすることは、丸暗記しただけの台詞を相手ではなく虚空に向かって叫ぶようなものだと思います。


 


 もちろん普段の仕事であればある程度固まったものを作って合わせに持って行き、その擦り合わせをして舞台に乗せることが常でありまして、そんなに呑気にじっくりと合わせをすることの方が稀であります。回数も時間もかかるようでは仕事になりません。


 しかし、その反例を一つ打ち出しておくことは悪いことではないと思い、今回の企画を思い立ったのでした。


 共演者は大学・大学院の後輩として過去にも共演している宮口遥名さんです。実は今回のコンセプトに通じる話を以前から何度も話して(愚痴って?)いまして、その決行には最適の役であると考えています。彼女はコロナ禍突入以降、音楽活動よりも演劇活動の方に軸を置いていますが、演劇の中で得た知見も活かしてアンサンブルに取り組んでくれるでしょう。


 極端なものも含め、ルールをいくつか設けました。


・その場で譜読みから始める。自分で勝手に練習してこない。

・各楽章30分で譜読みも合わせも終わらせる。

・相手に「こう弾いて」という要望を出して従わせることは禁止。

・最後に両楽章とも通奏する。録画録音もする。

・譜面は客席にも配布します。


 そしておそらく、お互い細かい即興を突っ込んだりすることが考えられます。そこはきちんとお互い瞬時に反応しなければなりません。そんな瞬間も聴いていただきたいと思います。


 このような企画であることから、かなり人を選ぶことになると思います。こんな人は楽しめそう、というポイントを挙げておきます。


・コロナ禍でアンサンブルの空気感に飢えている人

・どのように譜読みや合わせをしているか(音楽を作る過程でどのようなやり取りが行われているか)見てみたい人

・1曲を徹底的に深掘りして聴きたい人(楽典的な話は必然的に言及されることになると思います)

・公開リハーサルを観ることに興味がある人

・音楽家の練習配信が好きな人


 一方で、「練習ではなく完成した演奏だけ聴きたい」という人にとっては苦行のような1時間半だと思います。


 そういえば自粛期間中にも様々な媒体によって練習配信というものが行われていましたが、それを生で聴ける…というのが最も近い実態かもしれません。


 

 そんなわけでして、僕としても初の試みです。どのような形になるかは僕にも断定できません。この曲を60分で弾き切れる自信は無いわけではないですが…


 お金を取るかどうかということは二人でギリギリまで悩んだのですが、実験的な企画であることも考えて、満足してくれた人が少しでも投げ銭してくれればプラマイゼロくらいにはなるだろうし、最悪の赤字額もそこまで大きくはないだろうし、一つの疑問提起にはなるだろうし、ベーゼンドルファーで演奏の録音も残せるし…と考えて投げ銭制を採ります。


 座席は60名定員のところ24席の用意となっておりますので、広めに間隔を空けて座っていただけると思います。当日券は出しませんので、2日前ほどを目安に要予約でお願いします。このサイトのContactページからその旨を送ることができますのでご利用ください。


 神奈川県の感染状況がこの後どうなるかはわかりませんが、会場が閉鎖されない限りは行います。どうぞよろしくお願いします。


 

6/5追記


 今月より、宮口遥名さんとラジオを始めております。


 この企画に至るまでの経緯や目的のことを台本無しで喋っております。もしもご興味を持たれましたら、ぜひご来場ください。



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