• Satoshi Enomoto

【演奏会告知】バルトークの民謡編曲:及川音楽事務所ウィンターサロンコンサート


 今月の本番は2つあるのですが、どちらも出演を決めたのは1月の頭のことでした。まだコロナもあまり感染拡大しておらず、それこそ先の1/22にどうにか行った『古典派のやさしいソナタ』も「まあどうにかいけるでしょ!」くらいに思っていた時期です。まさかこんなにもなろうとは…


 あまり積極的に宣伝できるような状況でなさそうなことは重々感じつつも、演奏会自体を知らせないままに集客が酷いことになるとこちらの仕事も成り立たないので、とりあえず告知だけはさせてください。





2022年2月19日(土)

13:50開場 14:00開演

及川音楽事務所サロンコンサート


会場 タカギクラヴィア 松濤サロン

(最寄り駅:渋谷、神泉)


入場料 2,000円


予約申込・問い合わせ

当ホームページCONTACTより


曲目(榎本)

バルトーク:

《ソナチネ》

 1. バグパイプ吹き

 2. 熊の踊り

 3. フィナーレ

《10のやさしい小品》より

 5. トランシルヴァニアの夕べ

《ルーマニア民俗舞曲》

 1. 棒踊り

 2. 飾り帯の踊り

 3. 足踏み踊り

 4. ブチュムの踊り

 5. ルーマニア風ポルカ

 6. 速い踊り



 

 バルトーク(1881-1945)は近代ハンガリーの作曲家です。ピアノの師匠であるトマーン・イシュトヴァーンはリストの弟子でしたから、実はバルトークはリストの孫弟子にあたります。そのように伝統的なピアニズムを学んだ一面を持っているのですが、一方で同時にコダーイ(1882-1967)と共にハンガリー国内や近隣国各地の民謡を採集・研究もしていました。





 クラシックのピアニズムと民謡のエッセンス、そしてそこに前衛的手法までもが融合したバルトークの音楽は、様々な方向性の音楽が跳梁跋扈するかの時代においても独自の路線を走っていました。近くにいたコダーイの作曲家としての作風はどちらかというと保守的でして、作曲スタンスだけに関して言えばスペインのファリャ(1876-1946)やブラジルのヴィラ=ロボス(1887-1959)あたりが近いのではないかと勝手に思っています。


 学生時代にはブラームスやR.シュトラウスの音楽に影響を受けて作曲を行っていたバルトークですが、後にドビュッシーを知り、さらには民謡を研究するようになったところから作風は民謡のエッセンスを採り入れたものになっていきます。ドビュッシーに関しては単に印象主義というよりは五音音階の使用という面で刺激を受けたそうで、《版画》の楽譜を手に入れて大事にしていたようです。確かに1曲目の《塔》はアジアっぽい五音音階ですね。


 そんなバルトークの創作は、1923年の《舞踏組曲》あたりまでは民謡のエッセンスを割合前面に出したものが多く(全てとは言えない)、中には民謡の編曲作品も含まれます。今回のサロンコンサートで弾くプログラムは全てこの時期に作られた曲でありまして、1曲を除いて、採集してきた民謡のメロディにバルトークなりの和声を付け加えて構成したものとなっています。



 

 《ソナチネ》《ルーマニア民俗舞曲》は共に、当時ハンガリー領であったトランシルヴァニアで採集された民謡を元にして作られています。前者は "ソナチネ" というタイトルではありますが形式的にはソナチネではなく、後に管弦楽編曲された時には《トランシルヴァニア舞曲》というタイトルが付けられました。メロディ自体はほぼ民謡のままですが、それを支える和声は、時に伝統的な機能和声だったり、時に斬新なぶつかりを含む和声だったりと、バルトークの編曲手腕をたっぷり味わえるものとなっています。


 《トランシルヴァニアの夕べ》と題されたこの小品は、メロディもバルトークのオリジナルのものであると本人が言っています。《10のやさしい小品》という曲集には、民謡をそのまま使ったものと民謡に似せて作ったものが混在しているようです。民謡のスタイルを知っている上でそれに則って書いているため、パッと聴きでは区別がつかないかもしれません。聴いているうちに五音音階がちょっとあからさまな気がしてくる節が無いわけでもありませんが。


 またこの《トランシルヴァニアの夕べ》は、節回しによるメロディの自由な伸縮をどのようにつけるかという観点で奏者のセンスが大きく問われる曲でもあります。楽譜に書かれた音符の長さのみを正確に守ったところで伸縮は実現できず、テヌート、アクセント、フェルマータ、スラー、さらには音型や音程によって発生する微細なニュアンスまで拾えねばなりません。ピアノの曲ではありますが、歌を歌おうとしない人にこの曲の演奏は難しいと思います。自分でハードルを上げてしまいましたが、榎本の演奏がどうなるかは当日乞うご期待ということで…(笑)


 

 2/13のスペイン・ファリャ、2/19のハンガリー・バルトークという、近代民族主義強化月間で今月は展開します。1月はすっかり古典派に振り切りましたので、4月の《月に憑かれたピエロ》に向けて近代方向にまた引っ張っていきます。


 躊躇い無く集客宣伝ができるように感染拡大がまた静まってくれることを願うのみです…



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