top of page
  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

自主企画:ウィーンのクラシックとモダン

 毎年正月はTVでウィーンフィルのニューイヤーコンサートを観ているわけですが、その中で、今年2019年が日本とオーストリアの修好150周年の記念年にあたることを知りました。そして僕が趣味としている美術の方でも、今年はウィーン関連の展覧会(世紀末ウィーンのグラフィック展、クリムト展、ウィーン・モダン展、さらに10月にはハプスブルク展)が開かれています。

 僕は大学院でシェーンベルク(1874~1951)という作曲家を研究していました。西洋音楽史では、後期ロマン派から出発し、自由な無調を経て12音音楽に辿り着いた新ウィーン楽派と呼ばれるグループのリーダーです。シェーンベルクの弟子であるベルク(1885~1935)やヴェーベルン(1883~1945)の作品も弾きましたし、その研究に伴って19世紀末から20世紀初頭のウィーンの芸術文化についても研究しました。

 その一方で、ウィーン古典派と呼ばれるハイドン(1732~1809)、モーツァルト(1756~1791)、ベートーヴェン(1770~1827)の音楽の研究も最近始めています。元々ハイドンとベートーヴェンは好きでしたし、大学院でピリオドを勉強して以来モーツァルトにも目覚めました。この3人はウィーン出身というわけではありませんが、ウィーンで活躍しました。

 もちろんロマン派の時代でもシューベルト(1797~1828)やブラームス(1833~1897)、シュトラウス一家、さらにスッペ(1819~1895 今年で生誕200年!)などがウィーンで活躍しました。

 そう、ウィーンとはまさに音楽の都!

 クラシック音楽を愛する人ならばどうしても意識してしまう聖地であるわけです。


「まさに今年はウィーンブームではないか…!?」


 そう思った榎本がウィーン関連の演奏会を企画しないわけがありません。もちろんやります。というわけでお待たせしました、次なる自主企画はこちら。

 


2019年9月15日(日)13:30開場 14:00開演

宮口遥名×榎本智史 Piano Duo Recital

『ウィーンのクラシックとモダン』

@武蔵小杉サロンホール

全席自由3,000円 学生以下2,000円(50席)


プログラム

【ウィーン古典派】

ハイドン:変奏曲 へ短調 Hob.XVII:6

モーツァルト:ソナタ ヘ長調 K.332

【新ウィーン楽派+α】

ベルク:ソナタ ロ短調 Op.1

シェーンベルク:6つのピアノ小品 Op.19

ヴェーベルン:変奏曲 Op.27

ハウアー:余韻研究 Op.16

【連弾】

モーツァルト:4手のためのソナタ ハ長調 K.521


予約・問い合わせ

メール:virtuoso3104@gmail.com

電話 :090-7842-2759(榎本)

またはContactフォームより

 

 はい、昨年の12月ぶりに宮口遥名さんと組んでの企画です。なんてったって彼女はモーツァルトの研究家ですからね、この二人で組めばウィーン古典派と新ウィーン楽派をカバーできてしまうわけです。

 プログラムは、ウィーン古典派と新ウィーン楽派を足して、そこからベートーヴェンを抜いて、さらに新ウィーン楽派ではないけれど同時代のハウアー(1883~1959)を加えたものです。ベートーヴェンを抜いたのは、どうせ来年ベートーヴェンの生誕250周年に便乗して弾く確率が高いからです(笑)

 さて18世紀後半のウィーン古典派と呼ばれる時代からは、ハイドンとモーツァルトをピックアップ。宮廷仕えのイメージからお堅いイメージのあるハイドンですが、今回演奏するのはそんなハイドンの作品の中でも最もエモーショナルなものの一つである《変奏曲 ヘ短調》Hob.XVII:6 です。一方でモーツァルトは、ピアノ学習者にお馴染みかと思いきや即興のアレンジを要求する緩徐楽章や爆発的な終楽章を備えている《ソナタ ヘ長調》K.332です。ウィーン古典派が「クラシックのお堅い基本を作った作曲家たち」であるというより、むしろ「主体性をもつ芸術家として歩き始めた作曲家たち」であることを前面に押し出したいです。

 そして19世紀末から20世紀にかけての新ウィーン楽派からは、後期ロマン派的作風で書かれたベルクの《ソナタ ロ短調》Op.1、自由な無調と無形式で書かれたシェーンベルクの《6つのピアノ小品》Op.19、12音技法で書かれたヴェーベルンの《変奏曲》Op.27を演奏し、新ウィーン楽派の試行を辿りたいと思います。また、新ウィーン楽派とは一時接近したものの後に対立し、音のもつ響きや音色に着目して独自の音楽を模索したハウアーの作品として《余韻研究》Op.16も演奏し、ウィーンモダンの様相を俯瞰します。

 連弾枠ではモーツァルトの《4手のためのソナタ ハ長調》K.521を演奏します。二人で弾くとなるとまず《2台のピアノのためのソナタ》の方が思い浮かびますが、K.521は元々2台ピアノを想定して作曲され、途中で連弾に書き換えられた経緯があります。そのために演奏者二人は協力する関係というよりもむしろバトルを繰り広げる関係にあり、音楽的には明るく楽しい性格をもちつつも非常に高度な演奏技術を要する難曲となっています。宮口さんと共に持てる知識と技術をありったけ投入して、今の僕たちにできる最高のモーツァルトを作りたいと思います。

 ウィーンのクラシックとモダンにどっぷり浸る、ウィーン尽くしの演奏会になります。日本とオーストリアの友好の記念年に、美術や食べ物のみならず、音楽も味わってみませんか? チケット予約お待ちしています。

閲覧数:173回
bottom of page