• Satoshi Enomoto

【演奏会告知】表現主義に踏み出すシェーンベルク:及川音楽事務所スプリングサロンコンサート


 今月はファリャ→バルトークという近代民族主義音楽をお送りしました。この後は、依頼として受けている伴奏を色々こなしつつも、焦点は4月の《月に憑かれたピエロ》公演へと合わせていきます。そちらの稽古も始まるのでいよいよ忙しくなるのですが、やはり《月に憑かれたピエロ》に関しては、演奏するのみならず、観賞するのもそれなりにハードルが高い作品であることは認めざるを得ません。


 そんなわけで、事務所から「3月も弾かない?」と打診されたのを好機としまして、《月に憑かれたピエロ》の1ヶ月前にシェーンベルクの所謂 "自由な無調" と呼ばれる作品を聴ける機会を設けました。恒例のサロンコンサートの一枠です。



2022年3月19日(土)

13:50開場 14:00開演(15:00終演?)

及川音楽事務所スプリングサロンコンサートⅡ


会場 タカギクラヴィア松濤サロン

入場料 2,000円


曲目(榎本)

シェーンベルク《3つのピアノ曲》Op.11


予約申込

当ホームページCONTACTより

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 さて、今回弾く作曲家は、僕が主とする研究対象でもあるシェーンベルク(1874-1951)です。音楽の都、オーストリアはウィーンの生まれ。当初はマーラーの後継者らしく後期ロマン派的な作風を持つ作曲家としてスタートしましたが、その音楽の複雑化を進めるうちに機能和声を放棄、さらにその "自由な無調" と呼ばれる書法を体系化した十二音音楽を考案し、以後の西洋音楽に絶大な影響を及ぼしました。


 姿勢がアカデミックに偏っているとも評価されますが、少しだけツェムリンスキーに習った以外に作曲はほぼ独学。父を早くに病気で亡くしたため、実業学校を中退して16歳で銀行員として働きながら音楽を勉強した苦労人でもあります。評論家から「シェーンベルクは独学で和声もわからないから変な音楽を書くんだ」などと言われることもありましたが、実際にはシェーンベルクの方がむしろめちゃくちゃ和声に詳しく、和声に関する著書は有名でしょう。ナチス台頭を受けての亡命先・アメリカでも教育活動に尽力しました。



 シェーンベルクは所謂 "無調" と呼ばれる作風に踏み切るその前から、既に賛否両論を巻き起こしていました。《浄められた夜》、《ペレアスとメリザンド》、《弦楽四重奏曲第1番》、《室内交響曲第1番》…これらの作品はまだ後期ロマン派的作風の下にありますが、それでもその強烈な不協和音や斬新な音組織や音響は物議を醸したのです。不協和音や音組織を自由に扱う素地は既にあったと見て良いでしょう。


 妻マティルデと親友ゲルストルの不倫、ゲルストルの自殺あたりの時期から、機能和声の停止がより大胆に試みられるようになります。《弦楽四重奏曲第2番》の終楽章では最後に主和音で終わる以外に調性はほぼ浮遊しており、連作歌曲集《架空庭園の書》で主和音の放棄にまで到達しました。


 みんな大好き(?)後期ロマン派的調性から、機能和声の停止した "表現主義" と呼ばれる作風へのターニングポイントとなる作品群が、《弦楽四重奏曲第2番》Op.10、《架空庭園の書》Op.15、《3つのピアノ曲》Op.11、《5つの管弦楽曲》Op.16…あたりになるのではないかと思います。これらによって掴んだ感覚の一つの到達点こそが《期待》op.17であり、《月に憑かれたピエロ》Op.21だったでしょう。


 今回演奏するのが、作品番号があるシェーンベルクのピアノ曲の中で最初の作品である《3つのピアノ曲》Op.11です。実は既に一昨年の12月に空音舎で、去年の6月にPiascore OLOLで弾いているのですが、なにせ難しい曲である上に、そもそも弾く人が少ない曲なので、まずは聴ける機会をたくさん作ろうという狙いもあってまた弾くことにしました。


 実際、1回や2回弾いたり聴いたりして腑に落ちるような作品ではないと思いますが、1回聴いておくのとそうでないのとでは感覚もまた違うでしょう。この会で聴いて「?????」という感覚になったとしても、その経験を踏まえた上で4月の《月に憑かれたピエロ》を聴いた時に掴めるものが出てくるかもしれません。やはり聴体験を積まなければ耳も肥えてはこないというものでして。


 この作品については楽曲紹介記事としてもそのうち書きたいと思います。3月→4月とシェーンベルクを盛り上げていきますので、どうぞよろしくお願いします。


 改めまして、演奏会のご予約は当ホームページのCONTACTからお願いします。これが一番早く確実に届きますので、返信メールをお待ちください。各種SNSのメッセージなどでも受け付けてはおりますが、返信が若干遅いかもしれません。ご了承ください。



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