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  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】伴奏に乗る技術、音楽に乗る力


 普段、合唱や声楽、器楽の伴奏をしていて「こちらは伴奏者として音楽の流れを用意してその誘導まで出しているので、それをきちんと感知して乗ってきてほしい」と感じることがあります。


 声楽だと流石に歌だけパート譜を使うなどということは滅多に無く、ピアノが何をしているかを把握している人も少なくはない印象ですが、器楽はパート譜であることも多いですし、合唱が自分のパートだけにしがみついて歌っていることは珍しい話ではありません。ある程度仕方のない面もあるでしょうが、ピアノの楽譜を読めたり弾けたりしろとまでは言わないので、何をしているかを聴いてほしいということだけは書いておきたいと思うところです。


 特にそのような、周りの音楽が聴こえてこない状態に陥る要因としては、「楽譜に書かれた拍だけを数えようとする」ということが挙げられると考えています。やってみるとわかるのですが、自分の中で拍を数えようとした時には、外から聴こえてくる周りの音楽はその集中を乱す存在になってしまうのです。


 パート譜を読む場合、または総譜であってもパート譜的に読んでしまう時には、フレーズに入る前の休符や、フレーズを演奏しながらのリズムに至るまで、どうしても自分自身による拍のカウントを頼りに演奏しがちになります。しかしアンサンブルをする時、共演者が全自動で自らのカウントに合わせてくれるようなことは本来ありません。むしろ自分を取り巻く音楽に合流していかねばならないのです。


 この問題を解決するためには、既に流れている音楽に乗っかっていく技術が必要となるでしょう。それは周りの音楽を注意深く聴き、そこに沿わせていく力であるとも言えます。その力を養うためには、やはりまずは「聴こうとする」ことから始めなければならないでしょう。


 共演者がどんな音楽をやっているかを聴くこと。そしてその音楽に自分がどのように合流すればよいのかを判断し、掴むこと。やろうと思ってすぐにできるものではないと思います。何度かの試行錯誤の経験を積めばだんだんとできるようになるでしょう。


 拍の数を指折り数えてタイミングを見定めようというやり方が巷では行われていたりもするようですが、個人的には反対です。数えることにだけ集中して、合流すべき音楽の中の拍しか聴かなくなるからです。


 そんなことをするくらいなら、自分のパートのみならず他のパートの音楽を聴きあう時間を設けて音楽の全体像を掴む努力をした方がよっぽどためになると思います。拍の数が合っていたところで、噛み合った音楽の像がわかっていないならば本末転倒というものです。壁に向かって時計を見ながら台本の台詞を喋っているのではないのです。


 伴奏に乗って演奏する感覚が掴めないなら、一度演奏を休んで、伴奏だけを聴く時間を設けてみてください。そしてそこにどのように自分が乗っかっていくのかを想像するのです。それができたならば、あとは実際にやってみるだけです。


 こっちのことを聴いていないで演奏しているのとかわかりますからね! ションボリしますよ!(笑)

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