2022年の一般公開のコンサートは全て終演致しました。足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
既に2023年のコンサート開催情報もいくつか公開を始めておりますが、中でも4月には特に大きな自主企画公演を行うことになりましたので、この記事ではそれについて書かせていただきます。
2023年4月8日(土)
13:30開場 14:00開演
『バロック=ドラマティック』
『カリッシミ《イェフタ》』
会場
パルテノン多摩 小ホール
多摩センター駅より徒歩5分
入場料
3,500円
当日4,000円
出演
中林嘉愛 (Sop.)
島三紀子 (Sop.)
岡本香奈 (Sop.)
片岡美里 (Alt.)
松田健 (Ten.)
大石洋史 (Bar.)
榎本智史 (Pf.)
プログラム
バロック音楽傑作撰
(モンテヴェルディ、フローベルガー、カイザー、ヴィヴァルディ、ラモー、ヘンデル、J.S.バッハ)
カリッシミ《イェフタ》
予約申し込み
メールアドレス
k.i.artprojects@gmail.com (KI企画)
このコンサートのテーマは「バロック音楽」であります。
…「バロック音楽」とは、主に17世紀から18世紀半ば頃までのヨーロッパの音楽のことを指します。日本では江戸時代の前半あたりに重なる時代でしょうか。学校の音楽室などでカツラをかぶったバッハやヘンデルの肖像画を見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、そんなバロック音楽ですが、一言でこういうもの!と言い切ることは難しいです。しかし、その時代の音楽を集めて向き合ってみることによって、そこから浮かび上がってくる方針や傾向も存在することでしょう。
皆様ご存知のバッハ、ヘンデル、あとヴィヴァルディあたりはバロック音楽を代表する作曲家たちではありますが、それにしたってたった3例です。それに、彼らはバロック音楽の中でも最も後の方、次の時代の直前の位置にいるような人たちです。なにせ音楽史のバロック時代の便宜上の終わりは1750年のバッハの死とされているほどです。
確かに彼らは最後のまとめ役でした。しかし、まとめ役がいるということはそこに至るまでの作曲家や音楽もたくさんあったはずなのです。結末のみならず、そこに到達するまでの過程にも楽しみが転がっているものです。それらも込みで聴いてみよう・感じてみようというのが今回のコンサートの趣旨です。
「バロック」という言葉の語源は諸説あるようです。「歪んだ大型の真珠」のことだとか「無意味で煩瑣な論理形式」のことだなどとも言われるようですが、「大袈裟」「仰々しい」「誇張された」などといったニュアンスが共通するでしょうか。
もちろんこれがバロックの全面ではないにせよ、一面として捉えることはできると思います。一般の方々には「『癒しのバロック』みたいに言われるあの眠くなる音楽?」、ピアノ学習者には「バッハの《平均律クラヴィーア曲集》みたいな小難しい音楽?」と思われているかもしれませんが、それを覆すのも含めて、バロック音楽のまさにドラマティックな面に触れてみようというのがこのコンサート『バロック=ドラマティック』なのです。
「バロック」以外にも「オペラ」「オラトリオ」「カンタータ」「パルティータ」…などといったちょっと専門っぽい用語も色々出てきてしまうのはその通りなのですが、それらについての解説もわかりやすくプログラムノートに書こうと思いますので、小難しい話は心配せずに足をお運びください!
さて、そのメインプログラムに据えた作品が、ローマで活躍した作曲家カリッシミのオラトリオ《イェフタ》です。
普段からその近辺の音楽を聴くような人でなければ「カリッシミ…? イェフタ…?」となってしまうのは自然なことです。普段バッハより後の音楽にしか触れない人は未チェックかもしれません。だからと言って決してつまらない作品などではなく、むしろ後のヘンデルなどの作曲家たちには多大な影響を与えた作曲家・作品であります。
ここで唐突ながら、企画に至った経緯を軽く書いておきましょう。時は遡りまして2022年の1月半ばのこと、場所は横浜の某パンケーキ店です。
中林「ヘンデルの《メサイア》をやりたい」
榎本「いきなりはよしとけ、ワンクッションおこう。ヘンデルにも影響を与えたオラトリオが一つある」
ヘンデルの《メサイア》はヘンデルの代表作であるのみならず、クラシック音楽史上のオラトリオというジャンルの大傑作であります。そのオラトリオの祖先にしてほぼ最初期の傑作こそが、カリッシミの《イェフタ》なのです。ちなみにヘンデルも後に同名のオラトリオを作曲しています。
『イェフタ』は旧約聖書に基づくストーリーです。
アンモン人からの防衛戦争を戦うイスラエルの指導者イェフタは、戦争に勝利して帰還した時に最初に自分を出迎えた人物を燔祭(生贄)に捧げると神に誓い、戦争に勝利します。しかし、帰還したイェフタを最初に出迎えたのは、あろうことかイェフタの愛しい一人娘だったのでした。戦争に勝利して人々が歓喜に湧く中、娘を喪うことになったイェフタと、捧げられることになったイェフタの娘の心を痛切に吐露させ、その運命を嘆く6声部の合唱によって物語は幕を閉じます。
時に勇壮で、時に悲痛な独唱や合唱とそのコントラスト。そこには人間のやむにやまれぬ生々しい感情・心がダイナミックに、ドラマティックに噴出しているのであります。
この演奏会を通して伝えたいのは「本当は熱いバロック音楽」ということです。一人一人の生きる人間の中にある喜びや悲しみ、怒りなどといった様々な心の動きを克明に鮮やかに描き出すバロック音楽の世界に、あなたも踏み入ってみませんか?
Comentarios