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執筆者の写真Satoshi Enomoto

【雑記】(榎本的)楽譜の製本法



 楽譜の製本という話題が度々出てきます。それこそ伴奏を頼まれるピアニストが「伴奏譜をただコピーしたまま渡された!」と言って苦言を呈したり晒したりという形で。


 伴奏譜とは言え楽譜のコピーを譲渡するのはどうなん…?という考えは今はさておきますが、そのような場合だけでなく私的利用のために楽譜をコピーすることは多々あります。楽譜原本に注意を書き込みたくないという理由が第一にあるでしょう。僕もその理由から自分の楽譜をコピーすることが少なくありません。きちんと原本が送られてきてもコピーして使います。


 また、僕はIMSLP(著作権が切れたクラシックの作品の楽譜をダウンロードできるサイト)から珍しい曲を拾ってくることもあるので、その場合もやはりプリントアウトした楽譜は一枚一枚バラバラになります。


 このようなコピー譜やプリントアウト譜は、製本してページを捲り易くしなければバラけてしまって譜面台上が混乱するものです。製本が必要というのはそのような事情に因っています。


 

 そういうわけで音楽家の必需品がこちら、製本テープです。みんな(クソデカ主語)の大好きな無印良品で税込99円。ちなみにミシン目の入っているものもあって、そちらは税込190円。



 このテープで楽譜の端を繋いで折り、本の形にします。テープを貼るのが楽譜の表側か裏側かでまた好みが分かれたりもしますね。


 ところで、この作業が兎に角マジで本当に面倒なのであります。楽譜の端を揃えて傾かないように繋げるというのは、作業をするうちに培われる、一つの職人芸とさえ言える技でしょう。「音大にはコピー職人と製本職人がいる」と言われる所以です(余談。楽譜は基本的にコピー機の枠に適合しないサイズで作られていますが、上手い具合に余白を除外して五線譜の部分だけをコピーの枠に収める技もあるのです。僕もいくつかの楽譜で苦労しました)


 そういうわけで、製本には意外にも労力と時間を持っていかれるのです。「この作業さえ無ければ練習始めてるのに…」とは製本経験者誰しもが思ったことでしょう。


 

 お待たせしました、ここからが僕がやっている方法です。



 まず、僕は基本的に伴奏譜などはPDFデータで送ってもらいたい派です。製本して送ってもらえるのはそれはそれでありがたいですが、郵送費用も時間もかかりますし、メールで寄越してくれれば早いというのが理由です。依頼者に楽譜をスキャンしたりPDFにしたりという手間が発生すると言えばその通りですが。



 送っていただいたPDFをA4サイズ長辺綴じで両面印刷します。片面ではありません。もしもコピー譜を実物で送ってもらうならばA3に2ページ分、片面印刷がいいですね。その場合は楽譜の面が表になるようにして半分のA4サイズへ山折りします。


 なお、この時のインク代と紙代は経費です。報酬を気持ち程度上乗せすると伴奏が捗ります。




 ページの長辺に穴を開けます。僕が持っているものは35枚開けられるタイプのパンチです。たしか1,000円くらい。少ない枚数でチマチマと穴開け作業をする分の時間と体力を買ったと思えば高くはないでしょう。割と日常生活の中でも活躍しますし。




 リングファイルを用意します。僕が使っているのはやはり無印良品のもの。税込290円。このリングに楽譜を通せば、もう製本は完了です。1ページ分が厚くなく、捲り易く、さらにテープによる遅々とした製本作業から解放されます。さらにはファイルが譜面の台紙としての役割も果たしてくれます。



 「製本する度にリングファイルを買わねばならんのか!?」と思った方は心配ご無用。その楽譜を使わない時はリングファイルから取り出し、クリアファイルに入れて保管しましょう。製本解除というやつです。テープが貼られていないぶん、嵩張ることなく収納できます。このような方式にすることで、一つのリングファイルで何度でも製本ができます。



 

 しかし、このやり方にはデメリットもあります。


 テープ製本と異なり、横に4ページ並べて開くことなどはできません。基本的に譜捲りは自分でやるなり、誰かに頼むなりすることになります。僕は製本テープを使って各ページに小さい耳を付け、つまんで捲れるようにすることが多いです。


 その程度ならまだ許容範囲…かと思いきや、譜捲りに関することがもう一点あります。


 それは、偶数ページの楽譜を両面印刷すると譜捲りの回数が1回多くなるということです。譜捲り回数を増やしたくないと思ったら最初の1ページ分空けて印刷すればよいのですが、今度は紙が1枚多く消費されます。譜捲り1ページか、紙1枚か…というあまりにもケチすぎる選択を迫られるところがポイントです。好きにやってください。


 まあ、そんな地味なデメリットはありつつも、やはり短時間で薄く製本が完了するというのは拾いたくなるメリットでしょう。譜捲りは用意してもらえるし、とりあえず迅速な製本を…と思ったらこのやり方は有用だと思います。


 

 製本の話題に関しては、実はもう一つ「なるべく自分で譜捲りできる製本法」というネタを持っているのですが、これはまた別の機会に。


 なお、榎本は無印良品を応援していますが、回し者ではありません。

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