3日間に渡る『Cyber-bird Concerto in real & cyber spaces』の公演展示が終了しました。緊急事態宣言下であったにも関わらず、削減した定員枠の殆どが埋まってくれました。音楽に興味がある方々もさることながら、ARやVRなどの方面に興味がある方々もご来場くださり、思っていた以上に色々な縁も繋がりました。
告知記事では一応言葉で説明できる限りのことを書いたつもりではありましたが、実際に Holo Lens 2 を装着して鑑賞していただいてようやく「そういうことだったのね!」と納得される方が多かったです。それこそVRゴーグルを体験したことはあっても、Mixed Reality を、しかも音楽の演奏の中で体験するという機会は珍しいものだったでしょう。
ちなみに裏話ですが、ここまで機材トラブルに振り回された企画は初めてでした(笑) アプリが立ち上がらない、映像が指定の位置に出ない、音が指定のスピーカーから出ない、自前のWifiが弱い…等々。専門技術を持つスタッフ陣に助けられました。機械は人間の指示に何でも従うかというと、実のところそんなにそうでもないことを実感した次第です。
今回は、普段はアコースティックで演奏される《サイバーバード協奏曲》を "サイバー" 的に演奏する試みでした。この作品であったからこそ、このような上演解釈が可能であったとも言えるでしょう。主要な機材は補助金をいただいて購入という形を取りましたし、今後は今回の反省を活かしつつ、様々な上演可能性を模索していきたいところです。メディア・アートの発展や Mixed Reality 技術の活用も進められるのではないかと思ったりもします。この企画に誘ってくれた木村佳さんの周りでは、IAMAS関係者で既にチームが出来上がっているようで…(笑)
僕自身は機材に詳しいわけでもなく、本当にただピアノを弾くだけのことしかやっていないようなものなのですが、普段生身の演奏ばかりであることから、最新技術の体験は刺激的なものでした。このような上演形態を前提とする音楽作品が作られ始めても面白いかもしれませんね。
ところで、最終日12日に、ジャズピアニストのチック・コリアの訃報が世間を駆け巡りました。普段あまり話題には出していませんが、好きなピアニストの一人なのです。
いきなりこの話題を出したのは、とあるお客様の感想に関連するからです。Holo Lens 2 には演奏者の挙動が映し出され、スピーカーからは演奏された音が出ることになります。そこには譜めくりの動作や音なども含まれています。演出上、映像自体はSFのようなデータ化された光の粒で構成されていまして、それは過去にその場所で演奏した人間の影として見えるわけですが、これは演奏者が譜めくりをし、姿勢を変え、演奏をしていた "在りし日" の姿を残す記録方法になり得るのです。仮に演奏者が死んだとしても、同じ会場で記録されたデータを Holo Lens 2 とスピーカーを通して再生すれば、電脳空間にいる演奏者の影に会えることになります。過去に生きて楽譜を捲り、体を動かし、演奏していた姿を観ることができるわけです。この記録方法・上演方法はただの映像記録よりも生身に近く感じられるかもしれません。
あらためまして、スタッフの皆様、ご来場くださった皆様、補助金を承認してくださった神奈川県、ありがとうございました。
というわけで、今月は21日にオンライン配信公演『何がすごいの? テンペスト!』、28日に田端の Le Salon de Clavier にて Razbliuto 2nd Concert 『オペラ関連作品選集』があります。引き続きよろしくお願いします。
2021.2.21
『何がすごいの? テンペスト!』
榎本のブログ記事はこちら。
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2021.2.28
Razbliuto 2nd Concert
榎本のブログ記事はこちら。
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