年度末に2日間に渡るこの大きな本番があったので、年度の切り替わりの感覚がほぼありません。なんと昨年分の確定申告もまだ収入しか計算していないという体たらくです。四月馬鹿用のネタなど用意できていません。日常生活に戻らねば。
そんな話はさておきまして、シェイクスピア遊び語り『テンペスト:大嵐』の配信のための公演収録が終わりました。本来は昨年の6月に公演が予定されていたのですが、新型コロナウィルスの猛威が収まることなく延期、そして冬の更なる感染拡大を受けて配信前提の形態に切り替わりました。稽古も完全にオンラインのみ。リモート演劇とリモート歌唱の手法を採り入れて映像を作り、最低限の人数と場面数で生の演技や歌唱をするという方式になりました。
以前も書きましたが、Lutherヒロシ市村先生からこの企画への参加の打診があったのは一昨年の12月でした。なんと1年以上この『テンペスト』に関わっていたことになります。こんなに長い期間関わった企画は自主企画の中でもこれまでにありません。ただ、僕自身にとっては始めての劇音楽の仕事であったこともあり、じっくりと時間をかけて取り組めたのはむしろ良かったのかもしれません。あとはリアルで稽古ができていたらもっと音楽が馴染んでいたかもしれないとも思わなくはないのですが、現在の状況でのベストは尽くしたでしょう。この後万が一僕がコロナに罹っても、『テンペスト』の配信は皆様の手元に届くはずです。
お申し込みはLutherヒロシ市村先生のホームページよりお願いします。
書いた歌のラインナップはこちら。
・エリアル独唱
『おいで、白い砂の上』
・エリアル独唱
『深い深い海の底』
・ステファーノゥ独唱
『海には二度と出たくない』
・キャリバン独唱
『バンバンキャリバン』
・ステファーノゥ、トリンキュロゥ、キャリバン輪唱
『法律無視すりゃ捕まるだろう』
・アイリス、セレス、ジュノゥ重唱
『精霊たちの合唱』
(舞台で歌われたのは実はカット版。当初作曲した尺の長いオリジナル版がある)
・プロスペロゥ、エリアル重唱
『エピローグ』
演出からのオーダーやキャストの皆さんからの意見も採り入れつつの作曲となりました。榎本の嗜好を反映していそうな音楽は残りつつも、他の作品よりもかなりポップに仕上がっていると思います。
これら歌の他にも背景音楽を担当しましたが、実は歌ものについてしか楽譜を書いておらず、他の音楽は全て方向性を決めた上での即興演奏で行っておりました。スタッフさんが「毎回ちょっとずつ音楽変えてます?」と気付いていたようでしたが、どちらかと言えば毎回 “殆ど似ていた” の方が現実には近いでしょうかね。もちろん譜面に書き起こすことには利点もあるのですが、予期しないトラブルが起きないとも限りませんし、生の演者の演技の間合いもきっと毎回異なるでしょうから、予め決めすぎない方が融通が利くという節もあったりするのです。
映像や台詞に合わせて音楽を演奏するということは、実は意外にも初めての経験でした。専ら音楽に合わせて映像を編集するばかりでしたからね。発音のタイミングやテンポの伸縮などに難しさを感じた場面もありましたが、これはこれで面白いとも思いました。無声映画に即興で音楽を付ける仕事とかもやってみたいなぁ、なんて調子に乗って考えたところです。
あとは、コロナ終息後に本来の遊び語り形式を体験してみたいと思いました。このシリーズには今回が初参加なので、むしろこれまでの遊び語りの音楽感覚を体験していないのです。リアルタイムの朗読や会話にリンクさせてピアノを弾いていくわけですから、これはアンサンブルとして面白いに違いないと思っているのです。特に『テンペスト』などは登場人物が多いですから、やり応えがありそうです。
そんなこんなで、初めての劇音楽『テンペスト:大嵐』は一段落となり、それと同時に年度が変わりました。色々な意味で嵐のような荒れ模様の年度でしたが、また新たに色々な企画を打ち出していきたいところです。進行していた企画は全て消化してしまいましたしね。各活動の拡大も試みたいと思います。
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