• Satoshi Enomoto

【雑記】“レクチャー・コンサート” というエンパワーメント

最終更新: 3月23日

 “コンサート” と言えば、音楽家たちが何やら演奏してくれるのだろうというイメージを持てることでしょう。プログラムが配布され、休憩を挟んでだいたい1時間半~2時間くらい、演奏を聴くことになります。ポップスだとMCは付き物ですが、クラシックとなるとその割合は半々といったところでしょうか、ホールとサロンという会場規模の都合だけでなく、演奏者たちの考え方にもよります。どうしてもMCを入れたい人(僕はこっち)もいれば、全くMCを入れない人もいます。まあクラシックのMCと言えば、曲の聴きどころをサクッと紹介するか、その曲を選んだ理由を喋るかのどちらかだとは思いますが。


 では、“レクチャー・コンサート” とは一体何なのか?


 音楽を勉強することには、自身の音楽受容の幅が拡がるという効果があります。音楽というものには「その音楽の面白さを最大限に味わえる聴き方」というものが、それこそ曲ごとに異なっておりまして、その聴き方のヒントを予め持っていれば、初めて聴いた曲でさえも「こう考えて聴いたら面白い!」ということを見抜けるのです。音楽を勉強することの大きな利益はそこにあります。

 “コンサート” ではない “レクチャー” においても、机上の解説のみならず譜例の実演はあるでしょうが、演奏をまとまった時間聴けることは稀でしょう。“レクチャー” とは講座形式による音楽理解を目的としたものでありまして、実際にそれが自身の音楽聴取に活きるということが体験できる “コンサート” は本来別売りなのです。


 そう、“レクチャー・コンサート” とは、詳しい解説によってじっくりと音楽への理解を深める “レクチャー” と、実際にその音楽理解がどのように聴取に活かされるかを体験できる “コンサート” が立て続けに体験できるお得なセット・メニューなのであります。

 例えるなら、“レクチャー” に3,000円、それに関わる “コンサート” が3,000円となると、「レクチャーで学んだことがコンサートで活きる」という体験をするまでに6,000円かかるわけです。これが3,000円の “レクチャー・コンサート” に行けば、その体験が3,000円でできてしまうわけです。もちろん、レクチャーやコンサートを単体で1時間半ずつやったら時間が長大になってしまいますから、結果的に「レクチャー45分 + コンサート45分」みたいな構成にはなるのですけども、一つのことで1時間半も集中力が続くかということを考えると案外ちょうどよかったりするのではないかと僕は思ったりするわけですが、いかがでしょうか。


 クラシックの中にも、やはり聴くのにハードルが高い曲は存在するものです(クラシックを聴く人たちがクラシックなら何でも聴くと思ったら大間違いですよ。音大生たちですら「無調音楽こわ~い!」とか言うんですから)。それは聴き方がわかりにくい曲だと言い換えることもできるかもしれません。

 ここで「聴くハードルを下げよう! もっとわかりやすく、ただ聴くだけで楽しめるポピュラーな曲を演奏しよう!」という商売戦略がはたらくのですけれども、ジブリやディズニーばかりを聴かせることによって聴衆がブーレーズやフェルドマンの音楽も楽しむようになるかというと、ご想像の通りそんなことはないのです。なにせ様式が異なりますから。その音楽を聴かないままでいる限りは、ずーーーっと楽しんで聴けるようにはならないのです。

しかし、だからと言って「ほら、この曲を聴くんだよ!!!」とただぶん投げられても、よっぽど受容力のある聴衆を除いては困惑以外の反応しか返せないことでしょう。何度も言うように、聴き方がわかりにくい曲は確かにあるのです。それでは音楽家として不親切というものです。

 音楽自体のハードルを下げるのではなく、音楽家がその知識をフル活用して、聴衆が音楽のハードルを超えられるように導く。これこそが “レクチャー・コンサート” によって叶えられることです。


 これは聴衆へのエンパワーメントなのであります。人々が未知の音楽に遭遇し、それを受け止めるにあたって、音楽家はそれをお手伝いする役割を果たすのです。その人に聴こえている音楽の世界が少しでも広がることを僕は望んでいます。

 レクチャー・コンサートに持ってきてほしいものは「もっと音楽の世界を深く知りたい!」という意欲、期待、好奇心…そんなワクワクの感情です。音楽を深く愛好する人間ならば音楽家も聴衆も区別無く、その心に持っていると信じていますけれども。それさえ失わずに持ってきていただければ、あとは音楽家が道案内をすることを約束しましょう。


 もちろん、レクチャー・コンサートは聴き専の聴衆のみならず、音楽家、音楽指導者にも開かれています。自身を音楽家や音楽指導者であると自覚する人間は、自分にとって未知の音楽をこれからでも知ろうとする向上心に満ちた、非常に勉強熱心な人間たちでありましょう。普段から音楽研究を行い、様々なレクチャーやコンサートにも足を運んでいるに違いありません。

 違いありませんよね?

 そんな方々のご来場もお待ちしていますよ。


 レクチャー・コンサートというエンパワーメント。人々の中にある音楽の世界が広がることを願って、今日も音楽家たちは研究を続けるのであります。

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