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  • 執筆者の写真Satoshi Enomoto

【出演告知】知られざる晩年のリスト

及川音楽事務所

バレンタインサロンコンサート

2020年2月11日(火祝)

13:50開場 14:00開演

全席自由2,000円

タカギクラヴィア松濤サロン

(最寄駅:渋谷、または神泉)

曲目:

リスト《5つのピアノ小品》S.192

   《葬送前奏曲と葬送行進曲》S.206

その他、他の出演者によるプログラム

予約申し込み:

virtuoso3104@gmail.com

または当サイトのContactページより

 フランツ・リスト(Franz Liszt, またはリスト・フェレンツ Liszt Ferenc, 1811~1886)と言えば、もはや一般教養レベルで名の知れた作曲家/ピアニストでしょう。

 まずは何と言ってもピアノにおける超絶技巧路線の元祖みたいな人です。“超絶技巧練習曲”の名前を冠する作品群は今風に言うところの「映える(ばえる)」曲であり、ピアニストたちに好んで弾かれるために知名度も高いです。

 そして音楽史上においてはもう一点、『交響詩』というジャンルを創始したことで重要な人物となっています。詩的観念と音楽形式が結びついた“標題音楽”と呼ばれるものです。


 さて、一般に認知されているリスト像はここまででしょう。しかし、リストにはさらに別の顔があります。下の作品をご覧ください。


 この曲のタイトルを《調性の無いバガテル》といいます(元《メフィスト・ワルツ第4番》)。


 そう、リストは調性というシステムを突破していることを宣言した曲を書いてしまっているのです。一般にはドビュッシー、スクリャービン、シェーンベルクあたりの作曲家たちが調性を崩壊させたと認識されていますが、彼らが活躍を始める前に、晩年のリストがそれを試みていたわけです。

 これこそが、一般にはあまり知られていない “近代音楽の先駆者” としてのリストです。実のところ、リストがそのような音楽を模索した晩年の作品の書法にはまだまだ謎が多く、演奏者たちにとっても挑みづらい音楽となっているのです。


《暗い雲》

《悲しみのゴンドラ第1番》

《悲しみのゴンドラ第2番》

《凶星!》

《R.W.──ヴェネツィア》

 楽譜が読める方々には何やら不穏な音使いをしていることがわかるかもしれません。調号があってもその音同士の繋がりが非調性的であったり、そもそも調号が無かったりします。響きとしては減三和音や増三和音を多用しています。


 

 リストの傍には西洋音楽史における和声の革命家がいました。そう、ワーグナーです。

 ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》序曲の和声は“トリスタン和声”と呼ばれ、その斬新な和声は後の世代の音楽にも影響を与えました。


 リストとワーグナーは互いに影響を及ぼしあっていたようで、まさにその《トリスタンとイゾルデ》が初演された年にリストは実験的な小品集に着手します。それが今回弾く《5つのピアノ小品》S.192です。

 その名の通り演奏時間もページ数も短い5曲から成り、しかもリストらしくなく超絶的な技巧は一切出てこないという異例の作品となっています。そして何よりも、かなり自由な扱いの和声が耳に入ります。作曲年は1865年から1879年というかなりの隔たりがあり、恐らくリストが個人的に和声実験を行った結果としてストックしておいたものを後でまとめた作品と考えていいでしょう。5曲目《Sospiri!(ため息)》は減七の和音で虚空に消えていく──つまり主和音に到達しないという衝撃的な終わり方をします。


 そしてもう一つ、リスト最後のピアノ作品とされている(リストのことだしもっと後の作品が発掘されたりして…)曲、その名も《葬送前奏曲と葬送行進曲》S.206を弾きます。先日、プレトニョフが葬送行進曲の方だけを弾いていましたが、前衛的な葬送前奏曲も実はセットなのです。調性判定のできない音列書法的なベースラインが特徴的ですね。


 リストが亡くなったのは1886年。ドビュッシーさえもがその斬新な和声による作風をまだ確立していない時期に、リストは近代音楽に到達していたと言える面があります。その再評価は専門家と一部マニアの間では進んでいますが、やはり聴かれる機会、そして演奏される機会が依然として少ないのも事実です。

 近代音楽の先駆者としてのリスト。彼がその最期に後世へ遺した謎に向き合ってみようではありませんか。彼には謎が多すぎる。


コンサートの予約申し込みは、

virtuoso3104@gmail.com

または当サイトCONTACTページより受け付けております。よろしくお願いします。

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