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【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第13番『幻想曲風ソナタ』》Op.27-1
Op.27-2の方が有名だし分析も楽だしということで先に記事を書いたわけですが、やはり「月光」ばかりを取り上げてその工夫を賞賛しながら、より珍妙な構成をもっている第13番Op.27-1をスルーしておくのはよくないであろうと思いまして早速書くことにしました。 ベートーヴェンのピアノソナタの中で、第13番と第14番は『2つの幻想曲風ソナタ』としてOp.27という作品番号にまとめられています。その内の第14番の方が一般に「月光」と呼ばれて親しまれている一方、第13番はお世辞にも人気とは言えない扱いを受けています。僕でさえ、きちんと第13番がどのような曲であるかを認知したのは音大に入ってからでした。もちろん楽譜は手元に持っていたのですが、意識は向かなかったのです。楽曲構成のイレギュラーぶりとしてはどう考えても特筆すべき位置にある作品なのですが、如何せん音楽としての聴き栄えが地味である上に「月光」のようなイメージ戦略による売られ方もしなかったために、一般知名度は今なお明らかに低いでしょう。 そもそも第13番のどのような点が当時の他のソナタと比べてイレギ

Satoshi Enomoto
3月30日読了時間: 6分


【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第14番『幻想曲風ソナタ(月光)』》Op.27-2
いかにも名曲らしい名曲、既に充分な知名度をもっている作品、しかも既に解説され尽くしたに等しいであろう作品についてわざわざ記事に書こうというつもりはあまり無かったのですが、僕個人の作品に対する捉え方を書いておくことは悪いことではないだろうと考えまして、そのいかにも名曲らしい名曲たるこの作品について書いてみる次第です。 既に広く知られている通り、この《ピアノソナタ第14番》Op.27-2を指して呼ぶところの「月光」という名前自体はベートーヴェン自身が付けたものではありませんし、音楽の内容を意味するものでもありません。ベートーヴェンの死後に音楽評論家・詩人のレルシュタープが寄せた批評に基づくニックネームです。 むしろベートーヴェン自身が第13番と併せて付けた『幻想曲風ソナタ Sonata quasi una fantasia』の方がよりこのソナタの内容を直接的に表していると僕は考えています。第13番はかなり自由度の高い構成が行われているわけですが、作品番号を同じくする第14番もまたそれに準ずるものであろうということです。 この第14番を指して「一

Satoshi Enomoto
3月22日読了時間: 6分


【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第22番》Op.54
ベートーヴェン中期には愛すべきソナタが色々あると思っています。もちろん既に世間一般においても人気の高い番号がいくつか挙がるでしょう。 しかし榎本個人の好みはそこから若干ズレていることが否定できません。別に有名曲を意図的に嫌っているわけではないのですが、どうにも好きになれない曲があるのも事実です。具体的に名指しすると第21番「ヴァルトシュタイン」と第23番「熱情」。今後気に入る可能性も無くはないですが、現時点ではアンテナに引っかかりません。 ところで、第21番と第23番という大きな意欲作に挟まれて、何やら影の薄そうなソナタがあるではありませんか。 それが今回の記事で取り上げる《ピアノソナタ第22番》です。 この《ピアノソナタ第22番》Op.54が書かれたのは1804年のこと。まさに先述の《ピアノソナタ第21番「ヴァルトシュタイン」》Op. 53と《ピアノソナタ第23番「熱情」》Op.57の間に書かれました。第21番と第23番はいずれも大規模な部類のソナタであり、それらを書いている時期のベートーヴェンのヴァイタリティは推して知るべしというとこ

Satoshi Enomoto
2月25日読了時間: 5分


【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第24番「テレーゼ」》Op.78
ベートーヴェンのピアノソナタに関して、20番代のソナタでは恐らく第21番や第23番、第29番といった大規模なもの、が人気を集めるでしょう。その一方で、小規模な興味深いソナタも存在しています。2楽章構成のピアノソナタはハイドンにも前例がありますし、ピアノに限らなければモーツァルトも書いていますから、その楽章構成自体が特に奇妙というわけではないのですが、しかしその一曲一曲がやはりそれぞれの特色をもった作品であることは認められるでしょう。 僕は今、その中の第24番を必死に練習しているところです。演奏時間はリピートして弾いてもたった10分ほどという規模の、性格的には可愛らしい表情をもつソナタですが、いざ弾いてみると非常に繊細なコントロールと安定感を奏者に要求する作品です。2月12日に演奏することになっているわけですが、すっかり練習にかかりっきりで宣伝を効果的に展開できていないということもあり、手元の考えも交えて記事にして放流しようという次第です。 このソナタ第24番Op.78が作曲されたのは1809年のことです。前作の第23番「熱情」の作品番号がOp

Satoshi Enomoto
2024年1月9日読了時間: 6分


【音楽史】同じ詩で別の歌曲を作ること:同詩異曲の楽しみ
歌モノを制作する際に、曲より先に歌詞が作られているものを「詞先」、歌詞より先に曲が作られているものを「曲先」と呼んだりします。 クラシック音楽の場合、恐らく9割9分くらいの作品が「詞先」に該当するでしょう。歌詞とは書きましたが、主にそれらは作曲されることを前提とはしない「詩...

Satoshi Enomoto
2022年12月17日読了時間: 7分


【名曲紹介】ベートーヴェン《アデライーデ》Op.46:若き楽聖、歌の始まり
2022年12月23日(金)19:00~ 『彼方からの愛の歌』 ベートーヴェン歌曲集 1792年の11月、ヴィーンに一人の青年がやって来ました。彼こそが、後に西洋音楽史にその名を刻んだ大作曲家ベートーヴェンその人であります。一月後には22歳になるこの若者は、既にその名を轟かせていた作曲家ハイドンに師事するためにヴィーンにやって来ました。 もちろんドイツのボンにいた時からネーフェに学び、その楽才を育てていた彼ではありますが、大学をストレートで卒業する年齢でようやくヴィーンでの勉強を始めようということですから、この人は割と現代の若い音大生たちにとって親近感の湧く人物像なのではないかと思ったり思わなかったりします。 さて、ベートーヴェンはハイドンに師事するためにヴィーンにやって来たわけですが、肝心のハイドンがイギリスでヒットして多忙となり、あまりベートーヴェンを教える時間は取れなかったようです。 ではどうしたものか…といったところで、ベートーヴェンは他の教師たちに指導を仰ぐことになります。シェンクやアルブレヒツベルガーに対位法を学び、さらにはか

Satoshi Enomoto
2022年12月15日読了時間: 4分


【雑記】ベートーヴェンと神童営業
ベートーヴェンの生誕250周年である2020年に予定されていた数々のベートーヴェン関連行事がコロナ禍の直撃を受けて延期・中止になり、早くも2年が経ちました。僕自身も自主企画で「よっしゃ、ベートーヴェンのソナタとかめっちゃ弾くぞ!」と意気込んでいましたが、今やソナタ計画は白紙...

Satoshi Enomoto
2022年11月25日読了時間: 3分


【演奏会告知】『彼方からの愛の歌』ベートーヴェンが様々な愛を託した歌曲集【2022年12月23日(金)】
今年の12月には2つの大きな企画を控えています。別々に企画したもののはずが、図らずもドイツ・ロマンティック・リートのオメガ(シェーンベルク)とアルファ(ベートーヴェン)が揃う運びとなりました。 12月11日(日)昼 『架空庭園への道』...

Satoshi Enomoto
2022年9月10日読了時間: 4分


【演奏会告知】『古典派のやさしいソナタ』:ソナタ形式が作り出すもの
世間はオミクロン株の今後に注視している頃合いかと思われます。まだ症例が少なく、感染力と症状の重さがわかりきっていないことを考えると、現時点では水際対策によって物理的に防ぎ続けるのが最短であろうとは素人考えでも思うところです。...

Satoshi Enomoto
2021年12月2日読了時間: 4分


【演奏会告知】『重ねる音楽 ─ 重なる音楽』
榎本智史ピアノソロ・コンサート 『重ねる音楽 ─ 重なる音楽』 2021年12月18日(土) 14:30開場 15:00開演 (休憩あり、16:20頃終演予定) 会場:空音舎 京浜急行「雑色」駅より徒歩5分 全席自由2,000円 定員20名 要予約 予約申込み・問い合わせ...

Satoshi Enomoto
2021年11月22日読了時間: 7分


【録画配信・雑記】アンサンブルの作り方:みんなで音楽を探ること
先の6/12に行いました『アンサンブルの作り方』の録画配信を公開しました。 コロナ禍の影響もあり、すっかりアンサンブルが貴重なものになってしまった昨今であります。僕自身も、所属している合唱団の対面での活動が自粛されているところであり(医療従事者も含んでいるため)、かなりのア...

Satoshi Enomoto
2021年7月7日読了時間: 4分


【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第4番》Op.7
ベートーヴェンの初期のピアノソナタの中で、第8番『悲愴』以外の曲はあまり顧みられないように感じます。確かに勉強として弾くことはあっても、やはり知名度や演奏効果の面で『悲愴』の地位は不動であり、他の初期ソナタをまとめて聴ける機会は貴重と言えるかもしれません。 そんな初期ソナタの中にも、抜きん出た存在感をもつものがいくつかあります。その一つが、第29番 "ハンマークラヴィーア" に次いで規模の大きい 第4番 です。 第1番から第3番までは3曲まとめて Op.2 、第5番から第7番までも3曲まとめて Op.10 という番号が与えられている様子だけ見ても、やや目立った存在であると認識する人は少なくないかもしれません。そのイメージ以上に音楽の中身はエネルギッシュなものになっており、技巧的にも非常に難しい部類に入ります。 また作曲者自身は第4番を「Die Verliebte(愛する人)」と呼んでいたようで、特に裏の意味は無いと思うのですが、とても力を入れた作品であったのでしょう。現実の出来事に結び付けるには無理があるにせよ、大胆不敵で熱情的な性格である

Satoshi Enomoto
2021年6月9日読了時間: 5分


【名曲紹介】ベートーヴェン《ピアノソナタ第19番 & 第20番》Op.49
ピアノ学習者が "ソナタ" を勉強するにあたって用いられるピアノソナタがいくつか存在します。一般的にはその前段階として小さなソナタたる "ソナチネ" に取り組む場合が殆どであると思いますが、そこからソナタへの移行時に取り組まれる定番があるわけですね。 ハイドンの Hob.XVI: 35 、モーツァルトの KV 545 あたりが真っ先に挙がるでしょうか。どちらも調がC-Durであるという要因もあってか、人生初ソナタはおよそこのどちらかという場合が多いと思われます。 ところで、このハイドンとモーツァルトとセットで語られるベートーヴェンにも、比較的そのような立ち位置のソナタがあります。それが 第19番 g-moll と 第20番 G-Dur という 『2つの易しいソナタ』Op.49 です。 「Op.49」という作品番号が与えられ、数字だけ見ると実験意欲溢れる中期の作曲のように見えますが、実際には第19番・第20番ともに 第4番 Op.7 などの初期ソナタと殆ど同じ時期に書かれたものです。より細かく言えば第20番は第1番~第3番のセットOp.

Satoshi Enomoto
2021年6月8日読了時間: 6分


【雑記】ベートーヴェンの3大ソナタとその他のソナタ
たまに書いている名曲紹介とはまた別枠です。 今回はベートーヴェンの "3大ソナタ" と呼ばれているソナタ等について、普段なんとなく思っていることを書きます。本当に紹介する時は一曲一曲分けて書きます。 ベートーヴェンのピアノソナタは、誰が言ったか "ピアノの新約聖書"...

Satoshi Enomoto
2021年5月15日読了時間: 4分


【演奏会告知】『アンサンブルの作り方』
…というわけで、実に3月末ぶりに公開の場での本番です。シェイクスピアが非常に長い期間に渡ったので、さすがに4月は充電期間にしよう…と思っていたらまさかの新型コロナウィルスの拡大は留まるどころか拡大を続け、緊急事態宣言がどこまで及ぶかも気にしていたので告知がここまでずれ込みま...

Satoshi Enomoto
2021年5月9日読了時間: 5分
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